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【書籍化】巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない【4巻1月25日発売・コミカライズ化決定!】  作者: 雪菊
1章

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35.加護のブースト




 三人は何事もなかったかのように狩りへと向かう。ブライトは友達と一緒に居られてにっこにこである。そして、それ以上に信頼できる人間だけが周囲にいる状況のハロルドがいつもより柔らかい雰囲気だった。学園にいる時とはえらい違いだ。


 現れた鹿型の魔物はアースディアーと呼ばれている。土魔法を使ってくるそれは多少厄介な存在だ。慣れていない人間であると、その魔法に足を取られて、隙ができた瞬間に角で貫かれることもある。

 とはいえ、現れても一匹であれば狩れないことはない。

 ハロルドが魔法で水を撒く。

 撒くだけの、はずだった。


 いつものように使った魔法が、いつもの倍の量の水という形をとって現れてアースディアーを襲った。いつもとはあまりにも違うその威力に、次の魔法を躊躇する。

 それを隙であると見たのか、ぬかるんだ土を踏み締めて、突進しようとしてきたアースディアー。しかし、ブライトがハロルドを庇うように立つと、後ろで弓を引くアーロンに気がついた。

 前にいる二人よりも仕留めるのが容易そうだと感じたのか、嘲笑うように鳴いて後ろにいたアーロンに向かって下から槍のように突き上げる硬化した土。

 ふわりとその身体が浮き上がってそれを避ける。矢の標的が定まらないのかアーロンが舌打ちをした。

 アーロンに注意を移したのに仕留めきれなかったのが悪かった。



「凍れ」


「ぶっ飛べ!」



 足についた土はまだ水気を含んでいる。それが凍って動きが鈍くなる。ギリギリまで威力を弱めているのに、その力は以前よりも強まっている。

 その足を目掛けて棍棒を振ると、骨が砕ける音と共に風で威力の増した矢が額に刺さった。



「ハル、さっきの水何!?」


「わからない」


「威力強すぎて素材がなくなるのは仕方ないけど、お前が死んだら意味ねぇからな!」



 アーロンの言葉に「そうだね、ありがとう」と素直に礼を言って、息を吐く。それにしても先ほどの魔法は異常だった。わからないで済ませていいものではないと、眉間に皺を寄せた。ブライトはそんな彼を気遣わしげに見ていた。



「それにしても、倒すだけなら僕もできるけど、解体とか料理って難しいね」



 ブライトは二人が帰ってくる前にこの村に辿り着いていたため、帰りの資金と食事代を補うために依頼を受けたりしていたが、あまり上手くいかなかったのかそうぼやく。解体はハロルドに教わった通りにやったし、綺麗にできているとギルドでも言ってもらえはしたけれど、ハロルドほどの量が取れなかった。料理はアーロンがやっていたように「だいたいこの量かな」とかやると大惨事になった。



「綺麗にできてると思うけど。俺のは貧乏性だし」


「初めて作る時はちゃんと量ってレシピ通りにしろよ」



 ギリギリを狙って削ぎ落としているハロルドと、肉に雑にシオミダケの粉末と胡椒擬きをかけているアーロンはそう言ってブライトを見た。アーロンに関しては彼自身が適当に作ってもそれなりのものが出てくるのでブライトは毎回少し納得のいかない顔をする。



「アーロンは昔からお母さんの手伝いで慣れてるから、大体の分量が身体に染み付いてるんだよ。いきなり真似をできるものじゃない」


「うーん、やっぱり数をこなすしかないよね」



 そう言いながら、彼は後ろに突然現れたムーンベアーと呼ばれる魔物の頭を蹴りだけで飛ばした。骨の折れる音に背中がゾワリとする。



「頭なくても胸の月のマークがあれば判定入るかな」



 熊の魔物を片手で持ち上げるブライトの真似こそ、ハロルドとアーロンにはできない。二人は「ないものねだり、ってやつか」と思いながらアイコンタクトをとった。


 アーロンが肉を焼いている間にハロルドは魔法の確認をする。水魔法を使用しているのは、周囲が燃えて大惨事になる可能性が低いからだ。



「やっぱり、コントロールが難しくなってる」



 そう呟いたハロルドの前に妖精たちが現れて「びっくりした!?」「満足」「いぇーい」と言いながら頭の周りを回る。



「マナが言ってたの!安全のためにぶっ飛ばせる力は必要って」


「威力上がる。安全」


「やっぱりぃ、付き纏ってるっぽいの消せた方が、いいでしょ?」



 マナが誰かは知らないけれど、威力が急に増した理由はわかって、ハロルドは溜息を吐いた後、とりあえず話をしようと口を開いた。



「つまりこれは、君たちの力ってことかな」


「そ!加護をえいってしたの!!」


「ハロルド勤勉。大丈夫」


「変な女に引っ掛かるんじゃないわよぉ〜」



 要領を得ない言葉にどうすればいいものかと頭を悩ませた。

 おそらく、妖精たちにとって好ましくないこと、もしくは異性が近づいてきたのだろうと予測する。



(また一から練習だな)



 実際は、妖精たちによるただのお礼と好感度ボーナスだ。約束を守ってくれる子供が可愛くてしょうがない妖精はハロルドが大好きだ。

 妖精たちは前の“友人”が自分たちにとってよくない異性に引っ掛かっていたので、余計にハロルドを気にかけていたりするが、そんなことをハロルドが知るはずがない。

 ブーストのかかった加護によってもたらされた力を使いこなすために、ハロルドはまた頑張るしかなくなった。

解体はギルドでもやってもらえるけどブライトは手数料をケチった。ハロルドは時間があって面倒そうでなければやる程度。

ちなみに魔法を使う鹿さんは地域によっていろんな種類が出る。火山地帯で溶岩の中からひとっ風呂浴びた感じで出てくる火属性の鹿さんが一番ヤバい。

さらにちなみに、マナちゃんは例の妖精さんたちの前のお友達。

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