30.お迎え
アデニウムの話を楽しく聞いているのはハロルドだけだった。
魔法にしか興味がないエリザベータも、薬のことなんてほとんどわからないその他の者たちも「早く終わらないかなぁ」と思っていた。
「へぇ……砂蛹の成分が夕暮れ草の効能を引き上げるのか」
「そうそう!それでデスコーピオンの強力な毒を中和できることがわかったんだ。問題は……ラムルの砂漠に生息する魔物に対処するための薬なのに夕暮れ草がこちらでは簡単には育たないことだね……」
「こちらと同じような環境になるよう整えられれば……」
そんなことを話している二人は楽しそうだ。彼らの交流が続いている理由がなんとなくわかるというものだ。
「そういえば、ラムルローズの栽培に成功しまして」
「本当か!?もしよければ何株か分けてくれると助かる……!」
元々はラムル王国にしかなかったはずの、しかし絶えてしまった花の名前を聞いて、アデニウムが瞳を輝かせた時だった。
扉を叩く音がする。エリザベータが返事をすると、モナが笑顔で立っていた。しかし、その瞳は笑っているとは言えない。
「殿下」
「すまない!もう時間か!?」
ニコニコと駆け寄っていくアデニウムに、モナは溜息を吐く。
そう、長時間放置はしたが彼に悪気はない。ちょっと同性の友人と楽しくおしゃべりしていただけだ。
「殿下、次からは長く側を離れる場合は連絡をくださいませ。『ちょっと』で済む時間ではありませんでしたわよ」
「そう?」
「そうですわ」
モナも確かに研究に夢中になってしまうタイプではあったが、アデニウムほどその全てを研究に捧げてはいない。
(まぁ、わたくしの命はアデニウム殿下あってこそですので、多少は構いませんけども)
モナはかつて魔力過多症で命を落としかけていた。それを救ってくれたのがアデニウムの薬だ。
変人だの薬学狂いだのと言われているアデニウムだが、モナにとっては医神の使いとも思える人物だった。
「あまり姿が見えないと心配いたしますわ」
「そうかい?君がいうなら……うん。なるべく気をつけるよ」
そんな二人を見ながら、ハロルドは「本当だ。時間が迫ってるな」と言って立ち上がった。
「話がわかんなすぎて頭痛くなるところだった」
「え。ごめん」
アーロンの言葉に、ハロルドは素直に謝った。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
結局、研究熱心という意味では割と趣味が合う二人だったりする。




