25.神獣の差異
「あのフェニックス、一応神獣なのに挨拶に来させるってさぁ……」
ブライトが呆れ混じりにそう言いながら、ルートヴィヒのいる部屋へと案内する。
ハロルドは「そんなことを言われても」としか言いようがない。別に来いと強要をしたわけでもないのだ。
「というか、ルートヴィヒ殿下のところには来なかったの?」
「……そういえば、めちゃくちゃ震えてはいたかも」
ブライトは思い出しながら微妙な顔をしていた。
そう、あのフェニックスはルートヴィヒのことは怖がっていた。「食べられるとでも思っているのかなぁ?」とブライトが思う程度には震えていた。
ルートヴィヒは「神獣ね。無駄な仕事を増やして私やハルの負担にならないでくれよ?」と思いながら薄ら笑顔を浮かべていただけだ。しかし、友人ガチ勢であるが故に妙な気迫があった。フェニックスはそれに怯えていた。
「つーか、神獣なのに喋らないんだな」
「ああ、確かにスノウがあんな感じだから動物の鳴き声だったのは意外だったね」
「なんか、神獣って別にみんなが人にわかる言葉で話すわけじゃないらしいよ。むしろ、スノウが特殊な可能性もない?」
ブライトの言葉に、アーロンは嫌そうな顔をした。若干の厄介フラグを感じていた。
スノウがあんなに話し出したのは、名前を付けてからだ。それを考えると、単に誰もあのフェニックスに名をつけていないだけなんじゃないかとしか思わなかった。
(そもそも、契約者?覚悟とやらの資格持ち?が名前付けてないかもしれねぇもんな。……意外と、名前を付ける資格を誰も持ってないだけだったりしてな)
だが、それならば神獣は生まれないだろうとアーロンはその考えを打ち消した。
そもそも、フェニックスの件は自分には関係がない。そう思った彼は頭の中からこの件を追い出すことにした。
そうして、二人がルートヴィヒの部屋に到着すると、食事が用意してあった。
「来たか。夜会の食べ物なんて怖くて食べられないだろうからと用意させたんだ。これも気になるようなら鑑定してから口をつけてもらってもいいぞ」
「いや、ありがたいけどよ……お前らの分はねぇの?」
「僕は夜会出ないからねぇ……」
「私は二人が来る前に軽く食べている。気にしなくてもいいよ」
友人たちの気遣いに二人は素直に礼を告げる。
「そういえば、マリエ嬢からこれを預かっている」
「何?」
ハロルドがルートヴィヒから受け取ったのは薄いピンクの石だった。鑑定をすると、『守り石』と出る。
『守り石:聖女による守護の力を込められた宝石。ブローチにすると良い』
(あ、アクセサリーの種類まで指定するタイプなんだ……)
「カレーの礼だそうだ。なんか……ジョシュア兄上は笑顔で眺めていたが、ちょっと大丈夫か?と思うくらい喜んでいたぞ」
「まぁ、喜んでいたなら良かったんじゃないかな」
ハロルドはそう言って苦笑した。




