22.嫌なものは嫌である
意外とみんなに気に入られたカレーだが、作るのが非常に面倒だったので、ハロルドは「これ、頻繁に作りたくはないな」なんて思った。前世、カレールーを作ってくれた先人にお礼を言いたい気分である。少なくとも、ハロルドにそれの開発を頑張るほどの情熱はない。それよりは少し前に発生した蝗型魔物をなんとかする殺虫剤が欲しい気分である。
(食べる物に散布するから、どんな内容にするか難しいんだよな)
ある意味では、ハロルドもまた食に対して情熱を燃やしているのだが、本人には自覚がなかった。
「ハロルドさん、まねきねこ商会から夜会に出るための装いが用意できたと連絡がありましたよ」
農薬の調合を考えていたハロルドは、ミハイルにそう声をかけられて思考を戻す。
「そういえば、頼んでいたなぁ。陞爵、ないことにならないかな……」
「なりませんよ」
周囲は「さすが神子様。やはり、男爵で終わる方ではありませんでしたか!」という反応なのだが、本人は「増える責任、面倒臭い貴族関連のあれこれ、周囲の妬み……」なんて言って頭を抱えていた。いっそ、少しくらい横暴になれていればよかったのかもしれない。しかし、ハロルドにとって身分が高くなることは面倒以外の何ものでもなかった。彼目線の良いところはエリザベータとの釣り合いが取れることだけである。
「引きこもって、畑と家族のことだけ考えていたい……!」
訴えが地味だが切実だ。
実際、やるしかないことは理解しているのだが、やりたいかどうかは別である。
人を雇って任せるというのも手段の一つだったかもしれないが、ハロルドの真面目さでは全部人任せというものができなかった。
「とりあえずはもう数日したら夜会ですよ」
「式典だけ昼にやりゃいいのに」
「歓迎の宴も兼ねているので……」
各国の要人が訪れているためということらしいが、別日にしろよというのがハロルドとアーロンの感想だ。
「陞爵でもなければハロルドさんが出てくる夜会なんてないからでしょうね。要人たちはハロルドさんがどういった人物かを確認したいのでしょう」
複数の神の加護を持ち、その力を振るうことを許された少年。その人格が本当に問題ないかを確認しておきたいのは仕方がない話だろう。
それに加え、叶うことならば自国に引き込みたいと思う者もいる。ラムル王国は「仲良くやれればそれで」という態度を示しているが、他はそうではない。
「まぁ、勇者殿や聖女殿も参加されるようなので、分散はされるでしょうが」
本気で嫌そうなハロルドとアーロンの顔を見て、ミハイルは苦笑するしかなかった。




