20.肉待ち子狼
「ハロルド!肉!!」
「ハルは肉じゃな……いや、広く考えれば生きているものは大体肉か?」
扉を開けると同時にワフン!と現れたスノウはハロルドの膝あたりに纏わりついている。
そんなスノウを見ながらのアーロンの言葉にハロルドは苦笑した。
「まぁ、肉といえば肉だけど……多分スノウが言ってるのって、ノアさんが持ってきたお肉だよね」
「そう!」
ミハイルとペーターが嫌がったため、ハロルドの当番の日に持ち越された肉を、スノウはソワソワしながら待っていた。ハロルド的には「アーロンが使わないならだれが料理したって一緒じゃないかな?」と思っているものの、彼もまた慣れているだけに割と料理が上手い。
「なんか変な匂いがする」
ハロルドの買ってきた荷物に鼻を寄せると、スノウは不思議そうな顔をした。小さな狼姿でも意外に表情豊かだ。
「なんか……アデニウム殿下とその婚約者の人に向こうの料理のレシピもらったから作ってみようかなって」
「今、色んな国からの行商人も来てるし、異国料理の材料も手に入りやすいもんな」
アーロンも興味深そうにスパイスを見ている。
マリエにも差し入れるつもりなので、途中でお伺いの手紙も出してきている。以前ラムル王国に存在した聖人によるレシピなのだとしっかり記入しておいた。
「そういえば、広場の方でアイドル?っていうのが歌ってたな。ハルも見たか?」
「うん。すごい熱気だったね」
「フィアンマ帝国からわざわざ追っかけてきたヤツらもいるらしいぜ。人気なんだな」
ソロ、グループ、男女問わずいるらしく、広場付近は常に盛り上がっている状態だ。どういった形態で運営されているコンテンツなのかは不明だが、「異国文化ってそういうものかな」と二人は考えるに留めた。
「お肉は晩ご飯に回すとして、とりあえずレシピを試してみようかな」
「まだなのか!?」
「まだだねぇ」
耳と尻尾がしょんぼりしている。
そんなスノウを放って、ハロルドはカレーの調合を始めた。
(時間はかかりそうだけど、たまにはこういうのも楽しいよね)
ハロルドはそんなことを考えながら、スパイスを並べ始めた。




