8.学園3年生
学園に向かって、今年のクラスを確認する。変わらずAクラスであることにホッとした様子を見せたハロルドたちに教師は「余裕だったんだが……」と何とも言えない顔をしていた。
ハロルドたちは根が真面目なのか、基本問題はガッツリ押さえてくる。さらに、わからないことはきちんと教師に確認を取りにくるし、集まって勉強会をしていることもある。最近では、「飛び級……する?」なんて話も少しだけあったが、トラブルで学園に通えない時期もあったことを考慮するとそんな話もたち消えた。
そんな教師たちの前でハロルドたちは「今年も同じクラスでよかったね」と笑い合っている。
「今年はエトナもAクラスなんだね」
「ええ、バカのお守りがなくなりましたので。自分の勉強だけすればよかったのは楽でしたわ」
「あの人も上のクラスに行きたければ勉強すればよかったのにね」
あれだけ勉強を嫌がっていたお前がそれを言うのかよ、というアーロンの視線に知らんぷりしながらブライトがそんなことを話す。エトナもそれに頷いていた。
「まぁ、ブライトは今頑張ってるんだから」
「わかってるけど、なんかこう……お前も一歩間違ってたらああだったぞという要らない一言が口から出そうになる」
「それはアーロンの場合仕方ないだろう。……お前が一番、ブライトの面倒を見ていたからな」
生暖かい目をする友人たちを見ながら、ブライトもちょっとだけ申し訳ないような気分になっていた。
「ちょっと!そんな出来の悪い弟の成長を喜ぶ感じの目やめて!!」
そんなブライトの抗議にルートヴィヒが「反抗期か?」と首を傾げると、地団駄を踏んだ。
「同い年でしょ!兄貴面やめて!」
「ブライト様、その言動が原因では?」
エトナの言葉がトドメになったのか、項垂れるブライト。それに、「まぁ、今はちゃんと進級できたことを喜ぼう」とハロルドは苦笑しながら言った。
「今年から数名、脱落者が出ているみたいだし」
進級できず、さりとてこの先の学費を支払うことも難しい。そんな境遇の生徒が校門前で騒いでいる。そして、控えていた兵士に連れて行かれていた。
「アイツら、本当にこの二年、何にもしなかったのかよ」
頑張っている人を冷笑して、力だけが強ければこの先も自分たちはやっていけるなんて思っていた者たち。
しかし、そんなに上手いことがあるはずもない。
「力を制御する、その努力をしないものたちを野放しにするのは危険だからな。そのためにこの学園に入れたのだし、疎かにするならば魔力の封印は仕方ないことだろう」
そういう人間は各学年に数名いる。
連れて行かれた先で魔力のほとんどを封印され、これからは残った力で生活を送っていくことになるだろう。
魔力だけを頼りにしていた者こそ、辛い道になるだろう。剣を扱うにも、やはり身体強化の魔法が使えなくては、身を立てるのは難しい。自ら道を狭めたことに気がつくのはきっと後戻りができなくなった時だ。
「今日から学年も上がるし、僕らも気を抜かないようにしないとね」
ブライトが「僕、ああなったら普通に死ぬもん」と遠い目をしていた。
彼が魔力を封印されれば、その分身体強化の出力が下がる。化け物と評されたその頑丈というスキルだって役に立たないものになっていた可能性もあるのだ。
気を抜いては危ないことを、今の彼は心底理解していた。




