2.望まぬ訪問者
最近まで食料の奪い合いなどもしていた国がやってくることもあって、王城は騒がしい。
ハロルドは外を見ながらゆっくり溜息を吐いた。
望まないことばかり降りかかる。けれど、一部の人にとってはその成果を羨ましく思うだろうということもわかっている。
(爵位とか、大きな力とか、権力とか。何も要らないのにね)
そういうものが要らないと思ったからこそ、女神フォルテにも勇者や賢者、聖者といった目立つスキルをもらわなかったというのに、現実はうまくいかないものだと思う。
疲れたな、とハロルドが少しだけ瞳を閉じると、部屋の戸を叩く音が聞こえた。
「はい」
ハロルドがそう返事をすると、「失礼します」とシャルロット・ラリマーが入ってきた。
フォルテ教の聖騎士シャルロットは、主にハロルドの護衛をしている。聖剣を所持していること、聖騎士の中でもトップクラスの実力であること、趣味がどうあれ職務に取り組む姿勢が真面目であることから、ハロルドを含む周囲に信頼されている人物だ。
「ハロルド様、アイマン殿とラピスラズリ卿の話が終わったようです」
「そうですか。教えていただき、ありがとうございます」
「……お疲れのようですが、しっかりと休めていますか?」
気遣うようなシャルロットの言葉に、小さく笑みを浮かべる。
「まぁ、それなりには」
最近、眠りが浅い自覚はある。
そして、原因がストレスであるという自覚もあった。
とはいえ、今更何もできないこともわかっている。できることがないならば、落ち着いて待つほかないだろう。
「すまない、待たせた……と、ラリマー嬢もこちらにいらっしゃったのですか」
「はい。この方の身辺を守る任に、私ほど相応しい者もおりますまい」
そう言い切るシャルロットをジッと見つめたアイマンは「そうですね」と真面目な顔で頷いた。
「それで、何の話だったんですか?」
「ああ……シャハール、俺の元義姉がこの国に来ようとしているらしい。彼女の求めるような婿が国内で見つからないようだな」
「だからって、なぜこの国に?」
「俺を連れ戻し、仕事をさせる用の婿に据えて侯爵家以上の出身の男から種だけもらうつもりなのでは?」
「「……は?」」
理解できないという顔の二人を見ながら、アイマンは「そうだよな」と頷く。彼にも理解しづらい話だった。あの元義姉ならばやりそうだが。
優秀な高位貴族にはすでに婚約者がいたり、婚姻をしている。王太子に婚約破棄をされた彼女はそれだけでも相手が見つかりにくいというのに、高望みをした。相手は高位貴族でなければ、それも侯爵家以上でなければと言い張った。
「まぁ、仕事はあの人自身もできるだろうが、自分が下々から好かれていないということもわかっているからな。そういった人たちに言うことを聞かせる、説得する役目を任せたいのだろう」
侯爵家以上の血筋は譲れず、さりとて残り物には血筋以外を期待してはいない。
傲慢なところは相変わらずだとアイマンは溜息を吐いた。
「ハロルドに近づくようならどんな手を使っても退けるつもりだ。そこは心配しなくてもいい」
それに続けて、とても良い笑顔で「俺もあそこに戻りたくはない」と断言した彼に、ハロルドとシャルロットは苦笑を返した。
故郷に戻らないことを躊躇いなく選択できる程度には嫌がっていた。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
アイマンも「シャハールのことも、それを許すあの家もよくわからないな」って思っとる。あと、たまーに祖国から「そろそろ戻って来ん?」ってお手紙くる。お守り(色んな意味で)が嫌なので「嫌です」って返してる。
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今回もRuki先生に素晴らしいイラストをたくさん描いていただいたので、ご期待ください!!
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