7.領地へ1
試験が終わると、次は春季休暇だ。
領地の視察をすることを決めていたハロルドにはベッタリとエリザベータが張り付いていた。
「ハル、寂しかったわ」
「昨日も会ったよ」
学園で会ったのに寂しかったアピールをしているエリザベータを「まぁ、通常運転だな」と思うあたり、ハロルドは慣れていた。よその婚約者よりもドギツイ独占欲を持っているはずのエリザベータだったが、サラッと流しているハロルドを見たアイマンは「相性が良いようで何よりだな」と少し遠くを見ていた。
それでも、エリザベータの根底にあるのが婚約者への愛であることがわかるから安心して見ていられる。彼の義姉なんて、婚約者を「自分を王妃にするためのアクセサリー」くらいにしか思っていなかった。
(まぁ、そのせいで切り捨てられたんだけどな)
それを見ているため、弟分を大事に思っている以上は構わないだろうと思えてしまう。
「それで……そこの狐は何?」
「まねきねこ商会関連の魔族の子」
「珠さんは?」
じっと子狐を見るエリザベータ。彼らの「なんやの」「目が怖いわぁ」という声に、表情には現れないものの、少し苛立った様子を感じさせた。
ハロルドはそんな彼らを見ながら、「女の子に対する言動どうなってるのかなぁ」と思った。彼らには一応、姉がいるはずなのに。
「すみません。アンバー領のまねきねこ商会までコイツらを送ってくれるってハロルドさんが言うもんやから……向こう行ったらクロ……コイツらの姉ちゃんに引き渡すだけなんで……」
子狐たちが何か失言をしたのを察してか、珠が現れてペコペコ頭を下げる。
「クロ……ああ、黒金さんの弟さんたちなのね。それにしては躾の行き届いていないこと」
「いやぁ……クロも弟には甘いんや」
珠の耳と尻尾がしょんぼりしている。
「エリザ、そのクロさんは知り合い?」
「ええ。昔から、良い取引をしていただいております」
恍惚とした笑みを浮かべた彼女に、察するものがあった。
エリザベータが今まで使っていたハロルド監視アイテムの入手先が何となくわかった気がする。
(勘違いであって欲しいな)
覗き見バットくんが誘拐された際に破壊されたため、ハロルドはここ最近、結構気を抜いて生活できていた。女の子に見られていることを知っていれば、ある程度隠すべきことを隠して生活しなくてはならない。世の中には異性に見られたくないところがある程度存在するものだ。
「ハル、こっちの準備は終わったぞ」
「ハロルドの荷物の数も一応確認して」
アーロンとペーターが呼んでいる。
その先にはミハイルが資料を見直している姿が見えた。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
前にちょろっと珠の口から出てた狐は彼らのねーちゃん。
ところで、エリザさんは覗き見バットくん新調するつもり……?
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