1. 黄金、白銀
珠の右手で暴れている子狐が黄金、左手で暴れている子狐が白銀という。可愛い二匹の人の言葉を話す彼らは妖狐である。まだ変化の術が上手くないのだという。
「こいつらの姉はウチの看板娘やねん。で、今あの子、出張中やねんけどそこがちょっと治安が良うないんよ。やから預かっとんねん」
「姉ちゃんならこんな掴み方せん!」
「珠ちゃん乱暴!嫁の貰い手がないで!!」
黄金の言葉が耳に届いた瞬間、珠の表情がスンと抜け落ちた。「もう一回、言ってみぃ?クソガキ……」とドスの利いた低い声が響く。声を聞いてよほど怖かったのかぴたりと止まった子狐たちは、意識を取り戻すとすぐにプルプル震え出した。
ハロルドはそれには言及せずに質問をすることにした。怒りをどうこうするより、意識を逸らせたほうが珠も落ち着くだろうと判断した。
「それで、どうしてうちに?」
「お揚げ、食べれたからお礼言いに……」
「ああ……大豆の量産化も成功したから醤油とか味噌以外のものも作ってるんだっけ?」
ハロルドの呟きに「調味料への加工やそのまま食べる以外にも食べ方があるものなのか?」とアイマンが首を傾げる。
「大豆はほんまに色んなもんに加工できるし、活用方法も多いんよ。ハロルドさんのツテを借りて、割と色んなとこと取り引きもできとるし、同胞には食へのこだわりの強い職人も居る。やから、油揚げも作れるようになって妖狐共が大フィーバーしとるんや。狐たちの中ではハロルドさん、すでに神様扱いやで」
お揚げの神様とか何の冗談だろう、とハロルドは苦笑するしかない。しかし、キラキラした目を向ける子狐たちを見ていると本当にそう思われていそうだった。頭が痛い。
妖狐というからには見た目通りの年齢ではないと考えられるが、見た目はばっちり子狐だ。お礼を言いにきてくれたこと自体もまぁ嬉しくはある。
「俺だけの成果じゃないけど、お礼を言いにきてくれたのはありがとう」
ハロルドが見せた笑顔に子狐たちがパッと表情明るくする。動物の姿なのにどこか表情豊かだ。
「優しい」
「姉ちゃんのお婿にならん?」
「やめとき。ハロルドさんには綺麗な嫁さん居るから」
珠がどこか遠い目でそう言ったのを聞きながら、双子の子狐たちは「「えー」」と不服そうな声を出した。
「あと、それだけちゃうねん」
「おうちの周りのお話も聞いて欲しい」
キュルルンとした目に長くなりそうだ、と察したハロルドは、たまたま通りかかったペーターにお茶の準備を頼んだ。
珠の関係者が多く移り住んでいることを知っているハロルドは、彼らの家の話なら、きっと領地の話だろうと判断した。
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