18.隠し部屋
人魚型の妖精たちがハロルドとルートヴィヒの案内をする。キラキラと舞う光が水の飛沫のようだ。
空を泳ぐように飛ぶ姿は通常ならば可愛らしいのだろう。けれど、泣きそうな顔で、必死にハロルドたちを案内する姿は悲壮感しか感じさせない。
ハロルドへの人質が友人と、妖精であったように、彼らもまたその身を捧げるよう強制されていた。
彼らが奪われていたのは王であり、王が奪われたのは愛し子だった。
やがて、地下室のような扉の前に出る。ルートヴィヒが「下がっていろ」というので、ハロルドは数歩下がった。
ルートヴィヒのつけていたブレスレットが光ると、白い剣が現れた。それを以て扉を切り裂く。通り道ができたことを確認すると彼は剣を元の状態へと戻した。
視線の先には水槽のようなものがあり、中には珊瑚色の髪を持つ少女がいた。ティールブルーの尾鰭は傷ついて見える。その少女に妖精たちは近づいていく。そして、彼女にありったけの魔力を注いでいた。
足元には壊れた貝殻や色褪せた珊瑚礁が転がっている。それは異様な光景だった。それらが妖精の死骸であると見えてしまえば、なおのこと。
「……これは」
「ともかく、解放してあげないと」
近づいて、水槽を壊すと中から水が溢れ出そうになった。それをハロルドは魔法でそれを瞬時に凍らせる。ルートヴィヒは「邪魔だな」と言って部屋の端に氷の粒を数個蹴飛ばしていた。
海の妖精族の王であるという少女は一瞬だけ目を開いて「ひると、」と呟いて涙を溢した後、光に包まれ姿を変える。
ハロルドの手に残ったのは珊瑚色の種だった。魔眼でそれを鑑定すると、虹星花(海)と出ている。
(育てることで次代の妖精が生まれる、か)
どこか水晶花に似た形の種は美しい。
縋るような他の妖精たちに「王様」「王様の」「あなたが頼り」と言われてハロルドは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「わかった。……時間がかかるのは、覚悟をしておいて」
そう念押しすると、ようやく妖精たちはホッとした顔になった。
その水槽の奥に、隠されるようにもう一つ、扉があった。
ハロルドとルートヴィヒは目を合わせて頷き合うと、思い切りその扉を蹴り開けた。
——そこには一面の氷があった。
その中で、祈るように指を組み、瞳を閉じる少女がいた。長い藍色の髪に、どこかデイビッドに似た顔立ち。歳は16、7というところだろうか。
「ハル!」
「おい、一人で突っ走んな……!!」
ハロルドが婚約者と友人の声を耳にした瞬間、氷は瓦解した。
中から出てきた少女はルートヴィヒが抱き止める。
ハロルドは一直線に向かってくるエリザベータを……
避けた。
「ハル、そりゃないぞ」
「いや、だって怖いから……」
なんとも締まらない再会だった。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
氷の中の女の子たちの話はまたいつか。
エリザはそのままターンしてもう一回飛び込んで行くと思う。




