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【書籍化】巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない【4巻1月25日発売・コミカライズ化決定!】  作者: 雪菊
10章

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18.隠し部屋



 人魚型の妖精たちがハロルドとルートヴィヒの案内をする。キラキラと舞う光が水の飛沫のようだ。

 空を泳ぐように飛ぶ姿は通常ならば可愛らしいのだろう。けれど、泣きそうな顔で、必死にハロルドたちを案内する姿は悲壮感しか感じさせない。


 ハロルドへの人質が友人と、妖精であったように、彼らもまたその身を捧げるよう強制されていた。

 彼らが奪われていたのは王であり、王が奪われたのは愛し子だった。


 やがて、地下室のような扉の前に出る。ルートヴィヒが「下がっていろ」というので、ハロルドは数歩下がった。

 ルートヴィヒのつけていたブレスレットが光ると、白い剣が現れた。それを以て扉を切り裂く。通り道ができたことを確認すると彼は剣を元の状態へと戻した。

 視線の先には水槽のようなものがあり、中には珊瑚色の髪を持つ少女がいた。ティールブルーの尾鰭は傷ついて見える。その少女に妖精たちは近づいていく。そして、彼女にありったけの魔力を注いでいた。

 足元には壊れた貝殻や色褪せた珊瑚礁が転がっている。それは異様な光景だった。それらが妖精の死骸であると見えてしまえば、なおのこと。



「……これは」


「ともかく、解放してあげないと」



 近づいて、水槽を壊すと中から水が溢れ出そうになった。それをハロルドは魔法でそれを瞬時に凍らせる。ルートヴィヒは「邪魔だな」と言って部屋の端に氷の粒を数個蹴飛ばしていた。


 海の妖精族の王であるという少女は一瞬だけ目を開いて「ひると、」と呟いて涙を溢した後、光に包まれ姿を変える。

 ハロルドの手に残ったのは珊瑚色の種だった。魔眼でそれを鑑定すると、虹星花(海)と出ている。



(育てることで次代の妖精が生まれる、か)



 どこか水晶花に似た形の種は美しい。

 縋るような他の妖精たちに「王様」「王様の」「あなたが頼り」と言われてハロルドは苦虫を噛み潰したような顔をした。



「わかった。……時間がかかるのは、覚悟をしておいて」



 そう念押しすると、ようやく妖精たちはホッとした顔になった。

 その水槽の奥に、隠されるようにもう一つ、扉があった。

 ハロルドとルートヴィヒは目を合わせて頷き合うと、思い切りその扉を蹴り開けた。


——そこには一面の氷があった。

 その中で、祈るように指を組み、瞳を閉じる少女がいた。長い藍色の髪に、どこかデイビッドに似た顔立ち。歳は16、7というところだろうか。



「ハル!」


「おい、一人で突っ走んな……!!」



 ハロルドが婚約者と友人の声を耳にした瞬間、氷は瓦解した。

 中から出てきた少女はルートヴィヒが抱き止める。

 ハロルドは一直線に向かってくるエリザベータを……


 避けた。



「ハル、そりゃないぞ」


「いや、だって怖いから……」



 なんとも締まらない再会だった。

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

氷の中の女の子たちの話はまたいつか。

エリザはそのままターンしてもう一回飛び込んで行くと思う。

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