13.準備を終えて
王をやる気にさせるのに時間がかかったのか、ハロルドたちが連れて行かれるまでには時間がかかった。
ハロルドはその間に下準備を全て終えている。ちょっとめんどくさいタイプの人が道が険しい最短ルートを使い、保護者(?)連れでマーレ王国に来ていたのは想定外であったが。
(ノアさんの兄嫁さん、強烈だったな……)
以前、ハロルドが余った軟膏を「他所で売ったりするには性能が良すぎる」として警護をしてくれていた女の子に渡したことがあった。ハロルドは「ニキビとかにでも使ってもらおう」と渡した。それを彼女は自分の腕に塗った。薬品を被って酷い火傷があったその腕はみるみるうちに回復して、現在跡形もなくなっている。ハロルドにあるアルスの加護が力を発揮していた。他にもハロルドから「いつもありがとうございます」と贈られた薬のおかげで助かっている面がある。
そのおかげでノアの実家、ダンビュライト家ではハロルドはお気に入り通り越してやばい宗教でも始まりそうな感じになりつつあった。
ペーターだけでないことに若干のショックを受けるハロルドだったが、この国で自ら教祖仕草してしまっているので口を噤んだ。
だが、おかげでやるべきことは全て終わっている。ダンビュライト家の可愛いお嫁さまはハロルドの手伝いを積極的にしてくれた。マーレ王国の倉庫で埃をかぶっていた大事なものまで持ってきてくれていた。曰く、「信者リオネルがいいと言ったのだから持って行ってもいいのです!」とのことである。強い。
丸くなっているローズの頭を撫でながら、「もうすぐだ」と前を向く。
同時刻、白く大きな狼を先頭にドラゴンが数体空を飛んでいた。地上から「撃ち落とせ!」なんて聞こえるけれど、先に彼らの魔法の矢やえげつない雷魔法なんかが落ちてくるので反撃もできない。
愛らしい人魚型の妖精がウキウキとそれをみている。ハロルドの伝言を持ってきた彼女はマーレ王国の兵が倒れるたびに大きな拍手をしている。よほど嫌いなのだろう。
そんな彼女にアーロンが確認をする。
「で、ハルが薬配れって?」
「はい!そして助けてくれるのはご主人様だけだと喧伝して回って欲しいとおっしゃっていました!」
「……宗教でもやるつもりか?」
「滅ぼしてやると言ってくださっております!!」
「まぁ……ハルったらお茶目ね」
エリザベータの言葉に、アーロンは「お茶目か?」と首を傾げ、マリエとデイビッドは「元から神では?」と首を傾げた。マリエはともかく、デイビッドは完全にペーターに洗脳されていた。
「それにしても、あの温和なハロルドくんに滅ぼすって言われるのってなかなかよね」
「神子様の心の広さは折り紙付きですのに」
「そうか?あいつ身内と野菜に危害加えられたら普通にキレるぞ」
マリエとシャルロットの言葉に苦笑しながら、アーロンはそう答えた。
実際、魔物相手ならば割と容赦がない。マーレ王国自体をどうこうしようと思っていなかったのは「国が消えれば、国民にどんな影響が出るかわからなくて怖い」と考えていたところもある。それが一気に滅ぼす方に傾いたということは。
(マジでなくなった方がいい国判定したんだろうな)
アーロンとアイマンは同時に同じ結論に達した。何とも言えない顔をしている。
まず間違いなく、ハロルドは自分だけが被害に遭っていたならば飲み込んで国に全てを委ねただろう。しかしこの国はハロルドの祖父母が住んでいる村を襲撃し、王都を襲撃し、罪なきフォルテ教の神官を殺し、妖精に呪いをかけ、そしてハロルドの友人含めた多くの人間を更に手にかけようとしていた。
「向こうにはノアさん……つーかダンビュライト家御一行がすでに動いてるんだったな」
「はい」
「うへぇ、おれ、アイツらハロルドのことキラキラしてるけど変な目で見てるから苦手」
スノウが口にした言葉に、同行メンバーは揃って「純粋な信仰心だからな」と思っていた。なんというか、ノア以外のほとんどがハロルド信者様御一行なのである。
どういった役回りで動くのかを確認後、彼らは二手に分かれた。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
二手(布教と薬配り/救出)
別れても多分、抵抗され次第悪夢みたいな反撃受ける。デイビッドがいるのは彼がいるだけでドラゴンたちが楽しく言うことを聞いてくれるからもあるし、まぁ色々。
ちなみに某やらかし竜騎士は空中じゃなくて地上にいる。




