11.誘導
リオネルは非常に敬虔なハロルド信者になった。若干のめり込み過ぎな感じもする。
ハロルドはマーレ王国を滅ぼすと約束してくれた。それもあってリオネルは楽しく働いている。
元々、あまり良い扱いは受けていなかったし、ヴァイパーの主人である兄のことも嫌っている。というか、彼の持つ事情から両親共々死ねばいいと思っている。
リオネルは民の様子に心を痛めていた。ハロルドが薬を作れると知ると、国が買い漁っていた薬草を抱えて渡してきた。さらに薬が出来上がると彼だけでなくすでにハロルドに取り込まれている一部の兵士やヴァイパーの部下だった影の人間も合わせて信仰が深まる。
民を救えて、悪巧みもできる。一石二鳥である。
「ハロルド、悪い子になっちゃったな」
「こんな俺は嫌い?」
「好きだが?」
クスクスと笑ってブランの頭を撫でる。
常に緊張した雰囲気を作らなくて良くなったのは、ある程度敵を排除できたからだ。
そして、新たに仲間を得たハロルドは外との連絡も取れるようになっていた。キラキラと青い光が舞う。それは水の飛沫のようにも見える。手を伸ばせば、貝殻を髪飾りにした愛らしい、人魚のような妖精が手に降りる。爛々とした瞳がハロルドを見つめ、「いつでもお力になれますわ、ご主人様」と恭しく礼をする。
「ありがとう。それではしっかり隠れておくように言っておいて?」
「はい」
飛び上がって、ゆっくりと姿を隠す。
「ハル、外はどうだ?」
「ユール熱がやっぱり厄介みたいだ。ミハイルが薬草をしこたま持ってきてくれていたこと、王城の薬草をリオネルがほとんど持ち込んでくれたことでまぁ……結構な量の人が救えそう。俺たちを助けにきてくれたエーデルシュタインの人たちにはアルス様が何かしたらしくってユール熱には罹らないんだって」
すでに罹ってしまった病気を治すには薬や手術が必要であるらしいが、まだ罹っていないならば病を遠ざけることも可能らしい。
「ならばそこは安心か……。ところでお前の暴走系婚約者や我らの友人たちはどうだ?」
「……ドラゴンに騎乗して暴れてるらしい。俺がストップかけてるから王城にはもう少しの間来ないと思うけど、この国の貴族にとっては悪夢みたいな事態が起きてるよ」
「龍の国が、ドラゴンに蹂躙されるという出来事がすでに悪夢だろうな」
この国の欲深な貴族たちも冬が終わるまではなんとかなると思っていたらしい。
だが、ハロルドは現在四季を司るエスターの加護を受けており、天候をそこそこ操れるフォルツァート……の尻を蹴飛ばすユースティアの加護を持っている。ハロルドのためにと力を貸した神々のおかげで進軍に被害はほとんど出ていない。雪がエーデルシュタイン王国を遠ざけると思っていた彼らは逆に天候に味方されたエーデルシュタイン王国によって制圧されていった。
焦った彼らの次の手は何か。
「誘導している通りになればいいな?」
「そうだね、ルイ」
少年たちはその時を待っていた。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
ヴァイパーくん、もうちょっと人望大切にした方がよかったのでは……?




