3.痕跡探し
一方そのころな、アーロンとヴィーちゃん
「ハル、どこぉ〜!!」
ギャン泣き妖精の声を聞きながらアーロンは「何か残ってません?」と一緒にきたヴィクトリアに尋ねた。
ハロルドをよく知る彼だからこそ、何も残さずただ攫われたなんて思えなかった。
「……ありましたわ〜?メモ書きですわねぇ……魔法契約を強要された、とありますわ〜」
「魔法契約……確かそれなりに罰則が重くて強制力のある契約でしたっけ?」
「ええ。特殊な羊皮紙とインク、魔法陣を使用したものですわね〜。まぁ、内容次第では穴もありますし、ハロルドさんたちを殺してはおそらく大変なことになるとわかっているでしょう。命の心配はありませんわね」
「ハル……」
それを受け入れた理由があるとすれば、妙に冷静なルクスの言っていた「呪われたローズ」の件と、聖堂近くから発見された爆破魔法と毒を散布するように仕込まれていた魔法陣だろう。
ハロルドとルートヴィヒはおそらく、民と友を見捨てられず敵の手に落ちた。察知が遅れた自分を情けなく思っていると、ヴィクトリアは「恥じることはありませんわよ〜?」とアーロンの肩を叩いた。
「精巧に隠されていたのです。わたくしたちだって『必ずある』と思って探さなければわからなかったものを、子どものあなたが見つけるのは困難そのものです」
「……それでも、俺たちがアイツの足枷になっちゃいけなかった」
「いいえ、足枷ではありませんわ〜?」
むしろ、彼らはハロルドが『人間』として生きていく上で必要な仲間たちだろう。
(きっと、わたくしたちは今回思い知ることになるのでしょうね。真に神に寵愛された者を傷つければ、どんな災いになるのかを)
ヴィクトリアはそんな漠然とした予感を抱えていた。
ハロルドにとって魔法契約が本当に枷となり得るのだろうか。神に寵愛された少年が、本当に人如きの枠組みに囚われるのだろうか。
(本人は人ですけど……)
スノウがヴィクトリアの思考を遮るように「さっさと迎えに行こうぜ〜?」とアーロンの袖を引く。
「タイミング考えないとなー」
「なんかフォルテ様?もハロルドにストップかけられてるみたいだし、自分でぶちのめしたいのかもなー」
「ぶちのめしたい」
温和系神子様の思考を考えてどうしてそうなるかわからないヴィクトリアは目を丸くしている。
一方で、アーロンはハロルドが決して聖人でないことを知っている。
(アイツ、いざとなると何やるかわかんねぇんだよな)
この物騒妖精たちと共生できている時点でそんなことわかるだろうとアーロンは口には出さない。
すでに王家の騎士団、エリザベータ、アイマン、シャルロットなどが出発準備を進めている。
穏便にすまないことだけは、アーロンも理解していた。
アーロン「優しいやつをキレさせると怖いんだよな……」
同時刻
ミハイル「薬草が死ぬほど必要な予感がするので、ハロルドさんに僕の権限で動かしていいと許可されている分全部ここに詰め込みました」
ペーター「なんで俺は行っちゃダメなワケ!?」
ミハイル「嫌な予感がするので」
そしてエリザとシャルロットとアイマンはドラゴンに騎乗してぶっ飛ばして行く気満々だった——。
6月25日より巻き込まれ転生者1巻発売中!
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