2.やらかし女神様
「わ、私が絵を飾る場所を考えている間に、私のハルが攫われている……!?」
ポンコツやらかしたフォルテは非常に焦っていた。しかもよく見るとハロルドの表情は怒りが頂点超えてしまったせいか無表情になっている。人形じみたその顔は美しい一方でフォルテに「これあかんやつや」と思わせるには十分だった。しかも、妖精もいない。ハロルドは強い力を持っているけれど、それでも妖精たちがいるといないとでは安心感が違う。
思わず頭を抱えながら、エーデルシュタイン王国を見るとバチコリキレた面々が戦争準備に入っていた。元々、マーレ王国はやらかしすぎていた。けれど、寒い時期の戦で出る犠牲を鑑みて、春になったらしばきに行くつもりではあった。
それがハロルドとルートヴィヒの誘拐によって早まっている。
「ど、どうするべきかしら。ハルに要請されたら私も今後100年不毛の地にするくらいはやるけど……」
ウロウロしながら悩んでいると、「もう少し落ち着いたらいかがですか。おばさま」という刺々しい声が聞こえた。
フォルテの視線の先には真っ黒な長い髪に金色の瞳。真っ白なキトーンを着用した女性がいた。
「ルーナ、おばさまはおやめ」
「お父様の姉、もしくは妹なのだからおばさまでしょう?それよりも、ハロルドに手を貸しますがよろしいですね」
彼女は月の女神ルーナである。全体的に母であるユースティアに似ているが、違うのはその背丈であろうか。170cm程度あるのは女性としては高い方だろう。
「おそらくそれはルートヴィヒにも渡るでしょうけど、よろしいですね」
「問いかけられているのではなく、受け入れなさいと言われているような……」
「そう言っております」
ルーナは月の女神。日の光無き夜、人を導く月明かりの女神だ。
彼女は美しいものが好きだ。それは花でも良いし、芸術品でも、人でもいい。
そう、人。
彼女もまたハロルドに目をつけていた神の一人だった。
最も、理由は彼の容姿だけではない。
昔の神殿・教会・遺跡・祠。
近年ではそういったものは発見される度にフォルツァート教のものにされることが多かった。対応した神罰を与えれば呪われた地だのと言われ、元に戻してもらえず、信仰が弱まっていたのはフォルテだけではなかった。
けれどハロルドはそうではない。
領地で見つかった太陽と月を祀る神殿をそのまま修復するように命じてくれた。周囲の民にも「信仰する神をかえろ」なんて言わなかった。
(心根も美しい子……)
ルーナはそんな評価をしているが、ハロルドは「信仰の自由ってあるし、神様を敵に回すと碌なことにならない予感がするんだよね」という理由でそう命じたにすぎない。そんな理由で神様に好かれているなんてハロルドは知らないし、普段なら聞かされても「そんなまさかぁ〜」と笑うだろう。
だが、今接触したらどうなるか。
それを現段階では神すら知る由もない。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
月の女神 ルーナ
フォルツァートとユースティアの長女。双子の夜を司っている方の神様。片割れは太陽の神様。導きと休息の女神という一面もある。
ナイスバディな黒髪長髪金眼、少しキツめな印象の女神様。
このタイミングだからこそハロルドに加護を拒否されないのである意味では棚ぼた。
6月25日より書籍第1巻発売中!
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