27.豊穣の祈り
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(ある意味)フラグ回収
ハロルドとルートヴィヒは、揃いの白い服を着て教会の控え室でゆっくりしていた。真っ白な神子用の服には金と銀の糸で細かな花の刺繍が入っている。フォルテが大地と豊穣の女神であるがゆえの紋様だろう。
「ヴェール、邪魔だな」
「鬱陶しくはあるが、これがフォルテ教の正式な儀礼服だからな」
二人はそんなことを言いながら、のんびりとしていた。今晩を終えれば、もうあとは何もしなくていい。
フォルツァートの信者たちは一気におとなしくなったし、やらかしている人間も捕まった。
「けほ……」
「ローズ?具合でも悪いのか?」
「だいじょーぶ!ちょっとむせただけよ」
「本当に?」
ハロルドは魔眼を使ったけれど、特に異常はなかった。顔色が悪いわけでもない。けれど、なぜか気になった。
(これが終わったら、ティターニア様に聞いてみるか)
もし何か、妖精特有の病気でハロルドの目にも現れないのなら相応の手段を講じる必要も出てくるだろう。
もはや彼女たちは家族だ。不安なことがあるなら解消をしておきたい。
そんなことを考えている時だった。
扉の外から「神子様、殿下、出番ですよー!」と声がする。扉を開けると、神官たちがずらりと並んでいて、ハロルドは目を見開いた。
「行こうか、ハル」
ルートヴィヒがハロルドの肩を叩く。そして、前を歩き出した。その後ろに着いて歩き出した。
左右に分かれて綺麗に整列した神官たちはしずしずと頭を下げ、通り過ぎたハロルドたちの後に続く。
(なんか……緊張するな)
ハロルドは思わず唇を噛んだ。
普段こうやって大勢を引き連れて歩くことはない。自分を落ち着かせるように、ゆっくりと深呼吸する。
「神に挨拶をするだけだ。あまり深く考えなくてもいい」
ルートヴィヒがハロルドを落ち着かせるように小声でそう告げる。それに応えるように頷くと、聖堂に続く扉が開かれる。
そこには多くの人々が訪れていた。その中に制服を儀礼用にきっちり着込んだアーロンたちを見つけて、ハロルドはようやく気を緩めた。
そして、ハロルドたちは女神フォルテに向けて今年の大地の恵みへの感謝と来年の豊作を祈願する。
その瞬間、正面の四角いものにかけられていた布が落とされた。
そこに描かれていたのは美しき女神フォルテとハロルドだった。
「なッッッ……!?」
思わず振り向くと、オパルス子爵家次男ウルクが満足そうに頷いていた。
確かにどこからどう見ても宗教画だ。そこにハロルドがいる意味はないだろう。けれど、ウルクはハロルド込みでフォルテへの信仰を感じたのだ。だから、ウルクにとってはこれが正解だった。
だが、描かれたハロルドにとってはとんでもない出来事である。
ハロルドは強く願った。
(フォルテ様、本当の本当にお願いします!どうか、どうか、この絵を神域まで持っていってください!!)
ハロルドの渾身の願いに、嬉しそうな「いいの!?」という声が応えた。ハロルドとルートヴィヒのみに聞こえたその声と共に、聖堂に光が満ちた。
「私と、ハルの!並んだ!!素晴らしい絵!!」
聖堂を中心にドッと光の柱が降りた。ハロルドはポカンとその光景を眺めるしかできない。
去年と同じように「加護していますよ〜キラキラ〜」程度で抑えるつもりだったフォルテだが、思いがけないプレゼントとそれによる歓喜でちょっとタガが外れていた。キラキラエフェクトの代わりに、強い加護を示す光のゴッデスタワーが現れていた。
要するに、嬉しさのあまり、やらかした。




