2.今年の豊穣祭
妖精の扉を使って、いつものように王城に入る。ルートヴィヒが「おかえり」と友人たちを出迎えた。
「ハル、陛下が呼んでいるのだが、時間はあるか?用事があるならば別日に調整するが」
「陛下が?いや、今日は家の掃除くらいだし……」
「あー……俺らでやっとくよ。な、ペーター」
「そうそう!早く片付けてきたらいいよ」
二人にもそう言われたので、ハロルドはルートヴィヒと一緒に王のところへ向かうことにした。
そして、王の部屋に案内されると宰相であるカーティス・アメシストが扉を開けてくれた。「お久しぶりですね」と柔和な笑みを浮かべる彼に、ハロルドは「お久しぶりです、アメシスト閣下」と優美な笑みを返した。
「お。来たか、ガキども」
「なんで年長者の陛下が一番なってないんでしょうかねぇ」
カーティスの怒りが混ざった声をものともせず、エーデルシュタイン王国の国王であるリチャード・ダイヤ・エーデルシュタインはカラカラと笑っていた。
「故郷はどうだった。あれから一応、オブシディアン辺境伯とも話し合って、あの周辺の兵を増やしたんだが」
「おかげさまで平穏な夏季休暇を過ごすことができました。感謝いたします」
「平和が一番だよな」
うんうんと頷くリチャードに、カーティスが頭が痛いという顔をしている。ルートヴィヒはというと慣れているので、何も気にしていなかった。これでいいのか、王家。ハロルドが若干そんなことを考えだした頃、「それで本題だが」とリチャードの表情が真剣なものへと変わった。
「去年と違って、女神フォルテへの信仰者が非常に増加し、フォルツァートの神殿と同様のイベントを希望する声が増えている。豊穣祭で一発派手に催し物を頼みたい」
「私も同じ依頼を受けている」
ルートヴィヒも眉を下げながらそう言った。ハロルドは正直「面倒だな」と思った。
昨年は珍しい種類のバラを大量に用意して終わらせたが、それ以上となると難しい。そもそも、目立つこと自体好きではないため仕方がないだろう。
「とは言っても、今年はもうルナブルースターの大量生産してるんですけど……」
昨年は白いバラだったので、今年は夜に淡く輝く青い花をチョイスした。開花時期も調整しているので、きっとまた見事なデートスポットになることだろう。
「そうだな。私も楽隊の派遣などは申請したのだが、派手にとなると……」
この時点で王と宰相コンビは「なんでデートスポット作ってるんだコイツら」みたいな顔になった。彼らはあくまでも自分たちが出ない方向で考えているだけである。
「一応、絵の依頼はしてるんだけど間に合うようならそれも捧げる……くらいかな」
その絵に自分の姿が描き込まれているなんて知らないハロルドは呑気にそんなことを言う。
この世界のイベントなんてよくわからないハロルドは「野菜でも振る舞う?」なんて聞いていた。
「子どもが喜びそうだな」
「楽隊が来ているなら聖歌隊作るのもいいかもしれないな」
「おまえも歌わされるぞ」
「今の忘れて」
瞬時に撤回するあたり、ハロルドは人前に出るのがめちゃくちゃ嫌いだった。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
・表紙アンネのおかげでネーヴェの格好がわかっていただけてありがたいです!
幸運の女神はまぁ、助けてもらった分頑張ってもろて……本当にいけるか?
・エリザはゴリマッチョじゃなくてスーパーアルティメットゴッデス魔導師になるために鋭意努力中。
【お知らせ】
2024年6月25日に巻き込まれ転生者は不運なだけでは終われない1巻がオーバーラップノベルスさまより発売いたします。
イラストレーターはRuki先生です。素晴らしいイラストをたくさん描いていただいたので、ご期待ください!!
特典等詳細は著者活動報告にも書いておりますので、ぜひご確認ください!
今後もどうぞよろしくお願いいたします!
ちなみに6月8日にオーバーラップ情報局公式Xよりハロルドの私服・制服・制服正装版が出てますー!とっても良いので見てください!




