29.一夫多妻のススメ
「みことくれいこんれいほう?」
「ええ、ご存じありませんか?加護持ちハーレム法なんて言われることもある法律ですが」
帰郷準備を始めている最中、ミハイルは「そういえば、ハロルドさんは妻を姉上一人にするつもりですか?」と疑問を口にした。それに対して、ハロルドは法律的に一人としか結婚ができないだろうとごく普通の返答を呆れたように返したのだが、それに対して提示されたのが『神子特例婚礼法』なんていうものだった。
「何?そのゾッとする名前の法律……」
「数代前の勇者がハーレムを作りたいと駄々を捏ねた時に、当時の王が神の怒りを恐れて作った法律です。加護をしてくれる神の数だけ、伴侶の人数を増やせるというふざけた法律なのですが」
ちなみにその当時の勇者はそのことで色んな女神の神殿・教会を回って加護を得ようとし、最終的にブチ切れたとある女神にオタマジャクシに変えられた。
ミハイルの説明を受けてもハロルドはドン引きしている。そして、止まらない婚約申込の理由を理解して頭が痛くなった。単純にハロルドが年上の婚約者を捨てる可能性に賭けている馬鹿だけではなかったらしい。
とはいえ、ハロルドとエリザベータは仲良くやっているし、ハロルドにはハーレム願望がない。「別に要らないなー」としか思えない。だが、ミハイルの意見は別なようだった。
「身の安全を考えると、魔法攻撃力の高い姉上だけでなく、単純に武力のある方……もしくは家にそういった力がある方を伴うのも手かと思いますが」
「……俺の身の安全のために結婚して結びつきを作るってこと?それはさすがに相手に失礼じゃないかな」
「実際、最近の面倒は神が関わっていたとはいえ、マーレの妙な執着もあります。他国の間者も探っているようですので検討してもよいかと。正直なところ、ハロルドさんに何かあった時のことを考えるとやはり考えて頂きたいのが僕の本音です」
ミハイルは真面目にハロルドに何か危害が加えられることを心配していた。
異母姉の本気度を知っているから口を噤んでいたが、ドラゴンをけしかけたり、故意にスタンピードを起こそうとしたりと大きな被害も出かねないできごとがあった。加えて、先日のことは自分が原因でもあったが、ハロルドはやたらとトラブルに巻き込まれている。
「今すぐというわけではありません。相手の選別もありますし、あなたの考えだってあるでしょう」
「……ああ、うん。考えてはおくよ」
心配されていることはわかっている。
だが、起きるできごとにハロルドの心は追いつかない。
(受け入れる必要は、ないのかもしれないけど……そうしてまで守られるべきなのか?そんな価値が、俺にあるのか?)
ゆっくりとため息を吐いて首を横に振った。
ハロルド「検討するだけ。するとは言ってない」




