16.ダンジョン攻略5
そこにしか道がないのなら仕方がない。逸れるよりはと彼らは先に進み始めた。さっきまであった分かれ道はもうない。そのことを口に出したペーターにアデニウムは「多分、人数が規定数を超えたのだろう」と返した。
「きていすう、ですか?」
「そう。今いる人間が8人。そして妖精が5人……13という数字に意味があるのか、それとも定員12名だったのか」
「13……」
ハロルドの前世、西洋で13という数字は不吉なものとされていた。前世が日本人の彼にはあまり馴染みのない数字だが、日本人が4や9を避けるのと同じなのだろうと考えていた。
「13番目の悪魔、なんて話もありますし、縁起の悪い数字ではありますが」
「そうね。ダンジョンにそれが関わってくるものかしら」
シャルロットとエリザベータがエーデルシュタインに伝わる神話の内容も踏まえてそう話す。神話にあまり興味がなかったハロルドは「俺も神話の勉強、するべきかも」と苦笑しながら彼女たちのあとを歩いていた。彼は神からの加護をガッツリ受けていたが、神話に興味がなく、ほとんど無知だった。ど田舎に礼拝の習慣はなく、もっとも有名なフォルツァートでさえ詳しくない。彼が感謝するのは大地とその恵だったし、奇しくもそれはフォルテと相性が良かった。
「実際に悪魔がいるかは分かりませんけれど、神も精霊もいるのですもの。悪魔だっていてもおかしくありませんわ」
「アイツら、タチが悪いんだからあんまりそおいう話をするんじゃないわよぉ〜?」
リリィの嫌悪感たっぷりの言葉に、人間組が「あ、やっぱりいるんだ」と思った。ハロルドはすでに神と精霊と妖精でお腹いっぱいなので会いたくない。
「おおー、重厚感のある立派な扉だねぇ」
「ダンビュライト殿、開けてみますか?」
「……そうだね。俺がこの中で一番死んでも良い人間だし」
少し考える素振りをした後に、そういってノアは笑顔で扉に手をかけようとした。その前に服を引っ張られる。
ノアが振り返ると不服そうなハロルドがいた。
「言っておきますが、あなたは死んでも良い人間ではないので、防護策がないなら先に自己申告していただけると助かります」
その言葉に、誰の目に止まらないほど一瞬、ノアは目を見開いた。
影なんて『そういうもの』なのだ。
そう生きてきたし、そう育てられた。
ジョシュアはノアを友として遇したけれど、それが特殊なことであり、得難いことなのだ。
けれど友は王族で、いざという時にノアを使い潰すこともまた必要な立場だった。そして、目の前にいる少年もまた『そう』あるべき人間だ。
理解していないわけでもないだろう。自分が国一番の貴人であり、守られるべき人であることは。
けれど、そんな彼はただの影である……考え方によっては人とも思われない自分の命を惜しむのか。
「大丈夫だよ〜。俺だって、弱いわけじゃないんだからさ」
少しだけ、心酔する同業の気持ちがわかった気がした。
そして、案の定ハロルドは前世の自分より年下の男の子が安易に自分の命を天秤に乗せるのが心配だっただけである。
内心ではとてもハラハラしていた。
(ジョシュア殿下と同い年なら今年で19歳かな?普通に全然成人前の子どもだもんな)
口に出していないので、そんなことを考えるハロルド自身がまだ13歳であることを突っ込む人間はいなかった。
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