8.ミハイルと不運
ミハイルと一緒に馬車に乗ったら、車輪が外れた。護衛の面々は青い顔をしていた。
ガクガク震えるミハイルを抱えながら、結界を発動していたハロルドは「これはもう、ダメ。早くなんとかしないと」と真顔になった。御者に初級身体回復薬を飲ませて医者のところへ連れて行き、ペーターから没収した箒を使って王城へ運び込んだ。もう神の加護が盛られている自分が運ぶ方が安全な気がした。
「ハル」
名前を呼ばれてそちらを向くと、ルートヴィヒが駆け寄ってきていた。
ミハイルが一歩下がるのを腕を掴んで制止する。
「許可証明書が出たぞ。だが、本当に行くのか?」
「……うん。早めに消しとかないとマズイんだって」
「私のところにもフォルテ様が来て、同じことを言っていたが……」
コソコソと話す主人と第三王子を見ながら「それ僕が聞いていい話ですか!?」と言いたげな青い顔をするミハイル。彼はまだ自分が渦の中心だなんて思ってもいなかった。
「マリエ嬢には事情を説明して『できると思う』と言ってもらえた」
「うん。これ以上にならないようにさっさと解決してくるよ」
ミハイルは聖女の名まで出てきて、目を白黒させている。
「もしや……大事ですか?」
そう問いかけるミハイルに、二人は笑顔で頷いた。
そんな彼らはマリエのところにミハイルを連れて行って、今回の出来事を「マリエではまだレベル不足」ということだけを省いて説明した。
まさか自分が女神の恩恵を受けていたとは思っていなかったミハイルは大変驚いていた。だが、最近の不運に思うところがあるのか、少し納得したような顔をした。
「これが本来のミハイルの状態だったとしたら、生命維持にトゥーナ様の加護は必須だと思う。というか、現状さっさと殺されても仕方ない状態になってる。放っておくと周囲……というか多分俺を巻き込んで自滅しかねないってうちの女神様が判断してるから神託まで出た」
「そ、そこまでですか!?」
「え。やばくない?」
「マリエさんが加護を受けている方の娘さんでもあるので、恩を売るつもりでお願いします」
ハロルドの言葉に、「あの脳筋……娘くらい守れよ……」と呟いたマリエは悪くない。というか、ハロルドもちょっとそう思う。
「ついでに、報酬も用意しているので楽しみにしていてください」
ハロルドのそんな言葉に、マリエは不思議そうな顔をした。そして、「子どもがそんなこと気にしないの!」とデコピンした。ビリッときたのか少し痛そうな顔をしたあと、腰に手を当てる。
「私もちょっとくらいは頼れるお姉さんになってきたはずだし、これでも聖女なんだから!!」
これくらいできらぁ!と胸を張るマリエに、ハロルドはキラキラした笑顔を向けた。
「ありがとうございます」
天使顔負けのスマイルに、マリエは呆然とした。一瞬後光が差して見えたし羽が舞っている気がした。
「『本物』の美形って怖い……」
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