4.暴走王子様
王城に連れて行かれたアデニウムは、かつてのブライトのように「やだー!!あそこに住むー!!」とゴネた。
「あんまり言うなら国に返品するぞ」
「面倒なのですぐその処置を取っては」
「そうだな」
問題が起こりすぎて王も宰相もスーパードライだった。他国の王族みたいな面倒な存在、一人で十分なのである。何なら、命の危険がないのならデイビッドだってさっさと送り返したい。子どもの命が失われるのが可哀想だし、ドラゴンを飼うことになってしまった。さらに側妃の甥であるという立場から保護されているだけだ。
弱っているマーレをもう滅ぼしてしまう計画もある。彼の国民のためにも、その方がいいんじゃないかなーなんていう意見もあるほどだ。あのユリウスでさえ、デイビッドに「竜王を裏切る国など滅びて当然では」なんて発言している。
「アルス様の芳しき香りがする神子!!その手で育てられた美しい薬草たち!!あそこが天の国に違いない!!」
「香りって言い方がもう気持ち悪いな」
「天の国じゃなくて男爵家ですねぇ」
薬学狂いと称されるだけあって、口から出る言葉が割と薬学に関することばかりである。
薬草で特に高価なものの名前を連ねる他国の王子に、リチャードもカーティスも頭が痛い。手紙に「これ、我が国の大切にしている子に執着してるからそっちで見張ってくれない?」と書いて送り返そうかと二人ともが白けた目でアデニウムを見ている。
「というか、薬学都市イラージュの方が研究もしやすいだろうに」
「うむ。それはそうなのですが、あの土地からアルス様の加護持ちが出ることなく、あまり縁のなさそうなこの地で出現したのだ。気にならないわけはないでしょう」
我らの神の神子様だ。故に我々が守らなければならない。
学者たちのそんな狂気じみた熱意と信仰がアデニウムを後押ししていた。
「素晴らしい手の持ち主だ。貴重な薬草が自然のままの姿で生き生きと植っていた。この才能はやはり守らなければ」
リチャードはキラキラした瞳でそう言うアデニウムを見ながら、「うん、お前からな」という言葉を飲み込んだ。
ハロルドがスキルと趣味のせいで敏腕農民をやっているのは国だって把握しているし邪魔するつもりはない。
「あの子、そういうの嫌いですよ」
カーティスがそう伝えると、アデニウムは首を傾げた。
「彼はまず目立つのが心底苦手です。特に偉くなりたいだなんて思ってもおらず、男爵位も渋々受け入れてくれましたが、陞爵は嫌がっています。友人の身を守るためということもあって警護を受け入れてくれていますが、基本的に気の置けない家族友人以外は警戒対象なので他人を近くに置きたがっていません」
「ということは、あれは神子を冷遇しているわけではなく」
「互いの意思を尊重して、ああいう形に収めて頂いております」
「なるほど……つまり」
少し考え込んでから、彼はパッと顔を上げた。
「遠くから、珍しい薬草の種や苗をどんどこ送りつけるのが好感度を上げる秘訣、というわけですね!!」
「いや、帰れよ」
思わずそう口に出してしまったリチャードは悪くないだろう。
これに比べたらデイビッドはとても礼儀正しいな、とリチャードとカーティスは溜息を吐いた。
デイビッド、多分今くしゃみしてる




