54.試験は間近!
とりあえずドラゴン騒動は一段落して、ハロルドたちは日常に戻っていた。体力が戻り切らないハロルドを待っていたのは、学園の試験期間だった。
サロンで、彼らは必死に努力をすることになった。
「課題、課題……課題が終わらない……」
「ヴィーちゃん先生容赦ねぇーーー!!」
「補講は嫌だ、補講は嫌だ……」
「補講になるほど酷い成績は取りようがないだろう」
結局、ほっとしたせいか熱を出して数日寝込み、課題に苦しむのはハロルド。
そして、ハロルドの課題で必要な資料集めの手伝い兼試験勉強をしているのがアーロン。
両親も妹も何もしないので仕方なく兄の尻拭いに走り回ることになり、焦っているのがブライト。
広域魔道結界の魔力提供、そのほとんどを担っていたというのに、その間も勉強していたおかげで余裕綽々なのがルートヴィヒである。
「ネーヴェ様のせいだ」
「まぁ、うん。ハルはそう」
「いらないことばっかりする兄貴のせいだ!!」
「ブライトもそう」
他責思考とかではなく、今回は完璧に他者の責任である。
レスターの遺体からは洗脳魔法の痕跡が見られたため、それなりに配慮はあったものの、近いうちにベキリー家は取り潰されることになりそうだ。相変わらずブライトの妹は「私って可哀想」という態度を崩しはしない。彼らがまともに生活する事はかなり難しいだろう。
「なんで!!籍を抜いた僕があれこれやらないといけないのさ!!」
「ベキリー家が全体的にもうダメそうだったからだ。ついでにガーネット家もほら……今のお前ならわかるだろう」
「脳筋!!」
そんな彼らのテーブルにカタリと食器の置かれる音がした。
柔らかな紅茶の香りがあたりに漂う。
「ミーシャくん、それなぁに?」
頭を抱えていたブライトがころっと機嫌を直してミハイルに声をかける。
「エリザベータ姉上から頂いた、ウィートの新作です。いちごのマフィンですよ」
「有名店じゃーん!」
「そしてこっちはハロルドの作ったいちごジャムとアーロンの作ったスコーン」
「神タッグじゃん」
ブライトの目が『ガチ』になった。
アーロンは苦笑しながら、「素人の作ったもんだぞー」と言う。
「ハァ!?ちょっとだけでも一緒に住んでた僕は知ってるもんね!!アーロンくんは料理上手だし、ハロルドくんの苺なんて絶対、ぜーったい美味しいもん!!」
こぼれ出る笑いを堪えながら、ハロルドは「ありがとう」と告げた。
そしてイタズラっぽい顔で提案する。
「それじゃあ、試験が無事に終わったら、うちで打ち上げでもしよっか?」
「すぅ……僕は今から生活のほとんどを勉学に捧げます」
「そんなに!?」
アーロンが突っ込むと、「そんなにだよ」とブライトが至極真面目な顔で頷いた。
笑顔が溢れる、楽しい空間がそこには広がっていた。
「いたっ」
ハロルドから少し離れたカップの影。そこでローズは突如足に痛みを感じた。
それも一瞬で、「なんだったのかしら?」と不思議そうな顔をする。
(一瞬だったし、大したことないでしょう)
彼女はそう判断して、楽しそうなハロルドを見て笑顔になった。
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これで7章終わりになります。
数日お休みしてから8章更新予定。




