43.子育てという名の戦場
ハロルドはエリザベータ付き添いの元、助け出されたドラゴンの子供たちの居る場所へと来ていた。扉の前からでも鳴き声が聞こえるあたり、中にいる人物の苦労が偲ばれる。
ハロルドが扉を開けた瞬間、「順番!じゅーんーばーんっ!!」という叫ぶような声が聞こえた。大きなリュックを背負った犬耳の少年が小さなドラゴンにトングで肉を与える。それを隣にいるドラゴンが奪おうとすると「グルル」と唸り声を出した。怯えて「ぎゃうう……」と首を引っ込める子ドラゴンを見て、彼は「全くもう!これだからガキはさぁ」と唇を尖らせた。
「あ、ハル!たすけて!!」
ハロルドを見つけて、助かったとばかりに嬉しそうな顔をするのはスノウ。アーロンと一緒にいる神獣フェンリルの子どもだ。彼自身も子どもなのに「これだからガキは」なんて言っているのを見てハロルドは苦笑していた。
「ハルの指定したモノ、ドラゴンなんて聞いてない!!しかも餌自分で狩れないガキ!信じられない!!」
「君みたいな特殊な存在と一緒にしちゃだめだよ」
生まれた瞬間から、アーロンをその背に乗せて走り回ることができた神獣は今、少年の姿で若干ノイローゼ気味だった。
その間も餌を求めて子ドラゴンがぎゃうぎゃうと鳴く。「ああもう!うるさい!!」と言うスノウはちょっと泣きそうだった。
「……これは、すごいな」
「おれはまだマシ!アーロン寝てないと思う……。卵から孵ってそう経ってない奴らもいて、そいつらすごい。いくらミルク飲ませても3時間おきに鳴く」
「うわぁ」
「しかも別々のタイミングで。ようやくみんな寝たと思ったらどいつかがぐずり出す。地獄」
大半は保護できたが、数が一匹や二匹ではない。しかも厄介なことに、騎士たちを怖がって世話をできる人間が限られていた。
「ま、いきなり現れた変な人間の成体に誘拐されたり痛めつけられたりしてるんだ。怖がるのは仕方ねぇよ」
疲れた声のアーロンが奥から出てきた。やはり大きなリュックを背負っている。
「しっかし、保護が必要だったとはいえドラゴンはさすがに飼えねぇぞ」
「そのあたりは陛下とか宰相閣下が考えるよ。……今頃、頭抱えてそうだけど」
しかし、国内でこれ以上ドラゴンの死体を作るわけにもいかない。彼らは現場を見ていない以上、敵と認識されるのはこちらだろう。
「デイビッド殿下は本当に役に立つのかしら」
「それは分からないよ。ダメだったらそれはその時」
ハロルドはあまり期待していなかった。
うるさいから試すだけ試してやろう、くらいの気持ちである。ダメだったら仕方がない。マーレ王国の人間にとっていくらドラゴンが特別でも、エーデルシュタイン王国にとってはそんな存在ではない。
どちらでもいいのだ。
いいはずだ。
(でも、こうやって集まってる様子見るとなぁ)
気がつけば寝息を立てている。まだ小さいからか愛らしい寝顔だ。
どうしたものか、と重い溜息を吐いた。
いつも読んで頂き、ありがとうございます!!なお、リュックに入ってるのはたまご




