41.病み上がり
エスターのところにいたアルスのおかげでハロルドは一日でどうにか目が覚めた。
そんな彼は、現在。
目の前の婚約者からスプーンを押し付けられていた。
「エリザ、食べれる。元気とは言えないけど、無事。手も動く」
「ハル。心配をかけたのですからこれくらい良いのではないかしら」
真顔なのが怖い。
けれど、ハロルドは「確かに、絶対確実100%俺のせいじゃないけど、心配はかけたしなぁ」と抵抗を諦めた。両手を挙げて、「降参」と言って苦笑する。ゆっくりと口を開くと、エリザベータは心なしか嬉しそうにハロルドの口へ食事を運び始めた。
エリザベータの後ろでジト目になっている妖精たちのことは考えないことにした。
食事が終わった頃、扉を叩く音が聞こえた。ハロルドの代わりにエリザベータが返事をする。
「ハロルド」
部屋に入ってきたのは友人であるルートヴィヒ・クリーディス・エーデルシュタイン。この国の第三王子だ。
彼は倒れた時よりも顔色の良い友人を見て少しホッとしたような顔になった。
「少しはマシな顔になったな」
「迷惑をかけたみたいでごめんね」
「いや、だいたいネーヴェ神のせいだし、なんなら私の従兄弟のせいだ。謝るのはむしろ私のほうだ」
「いとこ……?」
「ああ。マーレ王国の現国王は母の兄だからな。まぁ、異母兄であるしそう似てもいないが」
疲れたように溜息を吐いた。
それに加えて、デイビッドが記憶を取り戻したことを知らされる。記憶を取り戻した方法も独特だった。
「ハロルドの野菜で作ったサンドイッチを口に放り込んだら、記憶が戻ったらしい」
「俺の野菜にそんな効果はないはずだけど」
「そうでもないらしいんだぁ〜」
ルートヴィヒの後ろからブライトがひょっこりと顔を出す。今でもエリザベータが苦手なのか、彼女がいるときはあまり近づいてこない。だからこの場にいることを珍しく感じる。
「ハロルドくんの野菜、鑑定にかけたら夏の神エスターの祝福効果が出てたんだよ。その効果が出たのかもーって」
「エスター様の加護、そんな平和なところに効果が出たのか」
エスターは「相性もあるからな。加護がどういう形で現れるかは某たち自身にも分からんのだ」と言っていた。自分でも確かめたが、物騒なスキルが生えていないことにホッとした。
「また新しい神を誑かしたのか」
「四季の神の加護は共存しないから、他の厄介な連中に囲い込まれる前にってくれた」
「それでそこの太々しい猫、落ち込んでるんだー」
猫に白い目を向けるブライトを不思議に思って、それを鑑定する。
◇冬の神 ネーヴェ
状態 神罰(フォルツァート・フォルテ・ユースティア・ヴィーナ)
「神って、神罰受けるんだ……」
なんとも言えない気持ちである。
知らない名前も見えるけれど、もう気にしたらその神様がこんにちはしそうな気がして口にするのをやめた。
「そういえば、ルイ」
「なんだ?デイビッドの首でもマーレに投げ込むか?」
「怖い怖い。そうじゃないよ」
デイビッドが勝手なことをしなければ、ハロルドはここまで消耗しなかったとおかんむりなルートヴィヒに、ハロルドがなんでもないように「神託があってね」と言って空気を凍らせた。
「ネーヴェ神がやらかしたから、その妹の雨と雷の神様がお詫びにって今年起こる嵐の災害について教えてくれた」
「やっぱり誑かしてんじゃん!!」
ブライトの叫びに、誰も反論をしなかった。
エリザベータ、ハロルドのお隣でご満悦




