32.ただ解決を求めて
あの女神たちに、ハロルドにすらバレないように、彼はゆっくりとその精神に根を張っていた。
彼が思うに、ハロルドは優しすぎるのだ。精神だって特別に強いとは言えない。だから手を回す必要があった。
今回の件はどうあっても、ハロルドを巻き込もうとする。地を這って、隙をつき狙う男の脅威は実際にすぐ近くまで来ていた。
ハロルドは開き直ったつもりでも、人を傷つけて自分の身を守り続けるのはその心が磨耗するだけだ。少なくとも、彼はそう判断した。
「この杖は光の属性か……得手ではないがハロルドならば難しくないだろう」
先ほどは重なったように聞こえた声も、今はハロルドの声に戻っている。
だが、言葉も態度も、表情すらもハロルドではなかった。
「何者だ!?」
「別に何者でも問題なかろう。デイビッド、早くしろ。『私』は問題だけを早急に解決して、この子を早く家に帰してやりたい」
ハロルドの目がデイビッドとかち合う。
すると、彼は「冬の神、ネーヴェ様とお見受けいたします」と頭を垂れた。
「だから、そういう面倒なのは良い。早くしろ」
否定しなかったことに、顔を青くするのはシャルロットだった。
つい最近もハロルドはユースティアに身体を奪われていた。幸いなことに、身体に負担は少なかったようだが、彼女は知っている。
それは、少ない時間であったことと、ティターニアという妖精王がハロルドを癒したからである、と。
そして、今の状態がハロルドにとって良いものであるとは思えなかった。ぐったりして、真白い顔のハロルドを彼女は間近で見ている。
「私からも早急な解決をお願い致します。でなければ、私は我らの神子様のために、このドラゴンを殺し、そのあとあなたの首も刎ねます」
「おい、シャルロット嬢!」
「アイマン殿。ハロルド様が戦を望まぬのは百も承知。ですが、この件で神子様が健康を損なうことがあれば、それは我が国、引いてはこの世界の損失。決して許すことはできません」
ハロルドは望んでおらずとも、現在では彼ほど強い加護を持つ人間は確認されていない。しかも、ハロルド自身は特に秀でているという自覚はないものの、各方面で才能を伸ばしているところを見れば彼が魔王を倒すことになったとしても誰も驚かないだろう。
デイビッドを見つめるシャルロットにドラゴンがその爪を突き立てようとした。けれど、それが届くことはない。
シャルロットに向けて振り下ろされた腕は切り落とされていた。
その様子に、デイビッドは本当に猶予がないことを悟って息を呑んだ。
ハロルド「そんなこと頼んでない」
それはそう




