31.すくうもの
前日18時前くらいに1話更新してるのでまだの方はそっちから呼んでください〜
放り投げられたデイビッドをアイマンがキャッチする。
——その瞬間だった。
剣がぶつかり合うような、高い音が聞こえる。
そして、シャルロットの目線の先には大きな黒いドラゴンがいた。その赤い目には怒りを感じる。けれど、不思議とハロルドの目には反応しなかった。
その手の中には動かない何かがあった。それを鑑定すれば「ドラゴン(素材)」とある。素材などと表記される場合、その存在は既に死んでいる。おそらく、それはこのドラゴンの子なのだろう。
デイビッドがドラゴンに叫ぶ。しかし、それは言語というよりも鳴き声だ。それも、目の前に在るドラゴンと同じような。
「デイビッド、君はもしかしてあのドラゴンと話せるのかな?」
「はい!どうか、どうか彼女を攻撃しないでください!!子供を失って、悲しんでいるだけなんです……」
「なら、その責任は誰が取る。この国の民に害があったならば、その命をどうする。これ以上暴れるのであれば……攻撃しないわけにはいかない。かといって、君の命をかけられても困る」
「そんな……」
ハロルドからすれば「そんな……じゃないんだけどな」という気持ちである。
どこまでの情報を聞かされているのか分からないが、彼が王族であることは事実であり、ドラゴンが暴れればこの周囲の人々が傷つくのも事実である。
「ハロルド、どうする」
「これ以上の面倒は起こらないように調整をかけて来たけど……」
「……お前は何をやってるんだ」
呆れたようなアイマンにニッコリと笑みを作る。根回しをしておかないと爵位がガンガン上がっていく予感しかしない。功績は欲しくない。ハロルドの望みはあくまでも穏やかな暮らしである。
「さて、デイビッド殿下。説得できる自信がお有りなら、時間稼ぎくらいはできます。けれど、できないのであればここで処分します」
手を横に向けて銀色の鍵を取り出すと、開けと呟く。異空間から現れた大きな杖はハロルド自身よりも頭一つ分は大きい。
それを掲げると、柔らかな金色の光が舞う。
「説得します!!」
そう叫ぶデイビッドの目には覚悟が見える。
「神子様、それは……!」
「これでピースは揃った」
シャルロットの制止するかという声を遮って呟くハロルドの瞳は、氷のような冷えた青に染まっていた。
「みこ……さま……?」
「この子の意に沿わぬものは、すべて、すべて氷雪の下に」
ハロルドの中性的な声に、どこまでも冷たい男の声が重なって響いた。
どこまでが彼の意思か。




