19.始動
最後胸糞
アーロンからの報告が王城に届いたことで、探すべきものがある程度絞り込めた。魔犬部隊を編成して、調査に当たることになった。
魔犬部隊とは、人が飼い慣らした魔犬を複数集めて編成した調査用の部隊である。主に禁止薬物、遭難者救助などで出動する。
魔物は確かに恐ろしい存在だ。けれど、一部のものに関しては人に飼われるものもあった。
魔犬、魔馬、魔羊、魔牛等、人の生活に役立てられているものも在る。ドラゴンやグリフォンに騎乗する者もいるのだから、おかしな話ではないだろう。
「ドラゴンの子を傷つける阿呆がいるとはな」
「神子を攫おうと思う阿呆がいるのですから、その程度はいるでしょう」
「自分でコントロールができないことなど、やるべきではないと思うのだが」
「結果的にそれで計画を崩されて、自分が巻き込まれるまで想像できますねぇ」
アンリ、エドワード、ダニエルが執務を行う部屋から出動する騎士たちを見下ろす。
逃げるようにやってくる魔物たちは、報酬を支払うことで冒険者に依頼しておおよその対処はできている。例の魔物を引き寄せる香水もあってか、惑わされはしたけれど、神獣の存在もあってなんとか対策は取れそうだ。
「実際にドラゴンがやってきた時の策も練るべきですね」
「巻き込まれやすいあの神子様の守りも固めなければ」
ハロルドの周囲には現在すでに影を忍ばせている。それに加えて聖騎士シャルロットがついている。彼女についていけるほどの人物が思い浮かばず、アンリとエドワードは遠くを見つめた。
なんなら、彼の婚約者、エリザベータ・ルビーは国内でも随一の魔法使いである。派手な魔法をぶつけたがるという悪癖はあるものの、強さでいえば申し分ない。
さらに妖精たちはハロルドを傷つけるなら容赦なく人間を始末しても良いと思っているので容赦がない。
「あの子は運が良いのか悪いのかよく分からないな……」
アンリの呟きに、側近二名は苦笑しながら頷いた。
国が動き出したことを知らぬまま、青年は呪符と布の塊を抱えて、王都近くの森へと来ていた。
その目は虚で、口は歪に歪んでいる。
頭の中で、「呪符を外せ」と声がする。
その声に従って勢い良く呪符を外すと、ボト……ボト……と赤いモノが落ちる。
弱々しい「ぎゅあぁ」という高めの鳴き声を「うるさい」と言って舌打ちをした。思い切り地面に投げ捨てると、痙攣し……やがてその動きは止まった。
「これで俺はあの男から金を受け取って、返り咲ける……俺を認めぬ愚か者も、化け物も、全員まとめて消えればいい……ッ!!」
男は愉快そうに笑う。
その足元には怯えながら事切れたドラゴンの子供。
本当に愚かなのは誰だったろう。
どこか遠くで、子の死を感じ取った母の咆哮が響き渡った。
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