11.カラムの気紛れ
アイマンを見送ったハロルドは、家の中に戻る。すると、カラムがスノウを転がしていた。わっしゃわっしゃと撫でられているスノウはまんま犬である。
「カラムは帰らないの?」
「ああ、ティターニアに用があるんだよ。アイツ、お前に接触するのを我慢してたのに、ユースティアに先越されて機嫌が悪いって聞いてるけど」
「なんか息子扱いと同時に伴侶扱いされたんだけど」
「マジで?ウケる」
全く面白くない。
カラムの笑い声が止まるのを、足を組んで待つ。やっと笑い終わったカラムは「まぁ、妖精が新しく生まれるなんて珍しくなったからな」と涙を拭った。
「まぁ、ティターニアの場合は気分とノリもあるだろうからそう気にしなくてもいいぞ。ユースティアはクソヤベェけど」
「ああ……なんというか、本当に何でこうなったのか」
まさか、フォルツァート関連で巻き込まれ過ぎたせいで彼のお説教の機会を作ってしまい、そのお礼として加護を与えられたのが始まりだなんてハロルドは知る由もない。あまりにも特殊すぎる例だ。
ユースティア自身も初めはここまでハロルドに肩入れする気はなかった。何せ、彼女は基本的に『英雄』を愛する。それは本来のハロルドとはかけ離れた言葉だ。
けれど、ハロルドはそれに値する成果を挙げてしまった。
神罰によって奪われた豊穣を取り戻し、助けがあったとしても聖女の力も加わっていた悪意による毒を打ち破ってみせた。
精霊を救い、神の信仰すらその行動で増やしてみせた。
神の愛を人のために使い、救うその姿に彼女は惹かれた。
「お前がなー、もっと自己中だったらまだ幸せだったかもしれねぇのになー」
「俺は割と自分中心でしか物事を考えていないんだけど」
ハロルドからすると、自己保身でやってきたことが裏目に出ているだけだ。特に誰かを進んで助けたつもりがなかった。
「何にしても、まぁた面倒に巻き込まれてんだろ?天界もゴタついてきて面白いし、人間は大変だな」
「ゴタついてる?」
「おう!」
内容を話そうとしないカラムをじっと見つめるけれど、ニヤニヤと笑うだけだ。言うつもりはないのだろうと溜息を吐く。
「まぁ、俺の家族や友人に害がないならいいよ」
そう言ったハロルドに「そんなお前に良いものをやろう」とカラムは何かを思い出したように指を振る。柔らかな砂色の光が散ると、いくつかの種が現れた。
「好きだろ、土いじり」
「好きだけど」
「そりゃ、悪事を働いたり、お前が怠惰だったらこんなことは言えないが。お前は働き者だし真面目だ。ちょっとくらい好きなことだけに力を注いだって誰も文句は言わん」
ハロルドが国の危機なんて考えなくても良い、そう言っているようだった。実際そうであるとは思うけれど。
「……それを言いに来たのか?」
「いや、ティターニアがどんな顔してお前に会いにいったか知りたかっただけ」
そんなカラムの言葉に脱力する。
妖精は自由だな、と思うことしかできなかった。
この後、ティターニアを散々いじり倒して、ハロルドに扉を開かせて帰るよ。
ティターニアは拗ねてしばらく引き篭もるよ。
ついでにカラムは「出禁!!」って言われる。
「そんなだから俺の方がアイツと仲良しなんだよなー」なんて煽るので胡桃とか投げられてる。




