4.夏の神
あけましておめでとうございます
ハロルドが怯えながら帰った頃、ユースティアの元に一柱の神が訪れていた。彼がここを訪れたのは、「姉上とお役目を交代する前に、母上に挨拶でもしていくか!」という軽い気持ちだった。
「それにしても、いつにも増して機嫌が良いが何かあったのか?」
四季の中で夏を司る神の青年——エスターは母ユースティアに尋ねると、恍惚としたような表情で「そうなの」という返答があった。
「わたくしのハルがとても愛らしくて勤勉な、良い子だったの」
うっとりとした声音に、エスターは顔を引き攣らせた。
彼は己の母親がいかに苛烈で恐ろしいかをよく知っている。とはいえ、人間はそれに恐れ慄くかもしれないが、それは神基準で言えばそうぶっ飛んだものではない。
「しかし、母上に気に入られた稀有な人間はどいつだ?」
エスターがそう言って水晶の床を鳴らすと、ハロルドの姿が映し出される。それを見たエスターの顔色が変わった。
(あ、あれ。コイツ、兄上のお気に入りじゃ……?)
ちなみに彼の言う「兄上」は同母の兄であり、冬を司る神だ。その性質からか冷酷に見られがちで、兄弟でもエスター以外とは没交渉。人とも神とも縁がない男である。
そんな彼はお忍びで人間界に出向いた時に会った当時5歳の紅顔の美少年ハロルドに優しくされて気に入ってしまったらしい。当然ハロルドは全く覚えておらず、道案内をしただけであったりするので優しくしたつもりもない。
そんな彼がフォルテの寵児だとわかったから冬の神は「目立ちたくない」という意見も考慮して遠くから見守るに留めていた。ちなみに、現在のマーレ王国全体の冬が終わらないのはフォルテでなく彼のせいである。
まずい、とエスターは冷や汗が出るのを感じた。
兄は英雄願望のないハロルドのために遠慮をして見守っていたのだ。それが異母弟に加え母親まで手を出した。しかも母ユースティアはどちらかといえば英雄を愛する女神である。
「八つ当たり先がすでにあって助かった……」
小声で呟いて、エスターはユースティアが要らぬ試練を与えぬように見張らなければいけないと覚悟を決めた。
ここにきた時はご機嫌伺いくらいの気持ちだったが、来て良かったと心の底から思っていた。
哀れ、苦労性の夏の神エスターは、今この時より母と兄のバランサーとなった。
ユースティアの子は
太陽の神
月の神
四季の四神
雨の神
雷の神
となっててどっちかってーと権能は父であるフォルツァートに由来するやつらばっかり。
秋の女神はちょくちょく夫と一緒にフォルテのところに行く。




