33.わがままセレナ
セレナはぷっくり頰を膨らませて、「無視しないで欲しいの!」と声を張り上げた。別に無視したつもりではなかった彼らは苦笑しながら彼女へと視線を向ける。ハロルドの顔を見てポッと頰を染めるセレナを見てマリエは「人外すら誑かせる美貌ヤバい。羨ましくない」と呟いて、エリザベータとシャルロットに睨まれていた。
マリエはハロルドが美人であることをちょっとだけ羨ましく思っていたが、人外に通じるとなれば話は変わる。たまに神やら精霊に隠される人間もいると聞いているのでだいぶ心配にもなってきている。
(いやぁ、私もハロルドくんの口添えのおかげで歩き回れてるとこあるから、助けてはあげたいけどさ)
ハロルド自身がマリエよりなんでもできるので口を出せることは何もなかったりする。せいぜい、ジョシュアにお願いするくらいだ。でも、ハロルドはそれより上の王太子やらさらに上の国王に保護されている。
「これからはずぅっとそばにいるの!」
「いや、俺は休み明ける前に王都に帰るけど」
「セレナも付いて行くの!」
「やめろ間抜け!!絶対迷惑をかける!!」
ブランがそう言うと「そんなことないの!セレナはハロルドのお嫁さんとしてやれるの!!」と叫ぶ。その瞬間、湖に雷が落ちた。「ぴぎゃあ!」という叫び声だけで済んでるいるのはさすが精霊といったところか。
「ハル、どうせ寝ていただけのお間抜けさんです。居なくなっても構わないのではなくて?」
「アタシもそう思う!焼き魚にしちゃお」
お嫁さん発言のせいか、静観していたはずのエリザベータが荒ぶっている。加えて、わがままっぷりに腹を立てていたのか妖精たちも「湖埋め立てちゃうー?」「賛成。いらない」などと言い出した。
「ハロルドはそこにいる女と結婚するぞ。我のおすすめはアンネだったのだが、まぁそこはコイツの選ぶことだからな」
ブラン的には身近な子とくっ付いたら縁が切れないという思惑なだけだったので、ハロルドが誰と婚約を結ぼうがさして気にしていない。そもそも、人間が精霊とどうこうなるだなんて思っていないのだ。
「セレナ、お前は人間が我々と同じ寿命を持っているとでも思っているのか?何年かに一度聞くだろう。人間に恋した精霊の悲恋を。異種族のために人の身を捨てるような変人も居なくはないが、それでもろくな結果にならないことの方が多い」
「でも、でも、セレナはその子が欲しいの!!」
「あのなぁ?我らが子供のような癇癪であれが欲しいそれが欲しいと人間を捕らえれば最終的には魔に堕ちるぞ」
幼い姿のブランの方がずっと大人びている。納得がいかないのか、セレナは湖に浮かびながら小さい子供が地面に寝転んで手足をバタバタさせるように「いーやーーー!!ハロルドはセレナのな……ぐぼぼぼぼ」……叫んでいたら、沈んだ。
呆れた顔のブランが風を操り、セレナを浮かび上がらせると「水の精霊が溺れるなんて、間抜けが過ぎるだろう」とボヤいた。
「我、とりあえずこれに説教しながらお守りしておくな」
「うん。頼むよ」
「こんなでも悪いやつではないのだ。あまり悪く思うな。人の子のお兄ちゃんと結婚するー的なわがままだと思ってくれ」
それをやっているのが本当はめちゃくちゃ長い時間を生きている精霊だからタチが悪いのである。
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