15.探索に向けて
ミハイルの気持ちはハロルドも分からなくもない。関係性に問題があったとしても、知り合いが酷い目にあっていれば多少考えてしまう。
ハロルドが母に連れられて共に逃げていたとしたら、彼もまた捕まっていた可能性は高い。ある意味世間知らずで、自分の見たいものしか見ないミィナがどこかで幸せに生きているだなんて思えるほど楽観視はしていなかった。それに付き合わされていたなら、なんて考えるとゾッとする。けれど、死んで欲しいとは思えなかった。そう考えるほど興味がなかったということもあるが、ハロルドを親として育ててくれたのは祖父母だ。祖父母の娘だから、彼らが心穏やかでいられるように無事であればいいと思った。
会いたくないという気持ちと、引き起こす面倒はともあれ傷つく姿を見たくはない。そんな気持ちが混在する。時間が経ったことも一因かもしれない。
(実際に会ったらまた意見が変わるかもしれないけど)
ミハイルと違うのは彼ほど両親との関係性が深くないことかもしれない。両親がどこかで再婚していたとして、子供ができて弟か妹が産まれていても、きっとそれを弟妹だとは思えないだろう。
気持ちを切り替えるように、森の方へと視線を向けた。鬱蒼として、入れば陽光すらまともに届かないのではという印象すら受ける。時折聞こえる鳥の鳴き声も不気味さに拍車をかけていた。
「事前資料にあそこにも精霊の伝承があるって書いてあったけど本当かな」
むしろ魔物が跋扈し、現れても悪魔などが出てきそうだ。胡乱げにそう言って、腕を組む。
「うーん、微かにそれっぽーい気配はするわね」
「本当に微かです。何かに覆い隠されているような」
ローズとルクスの言葉を聞いて、それならば確かめに行かなければいけないだろうと頷いた。
特に人外専門になったつもりはないハロルドだが、妙に懐かれるのは確かだ。それ故かできればその存在を確認してきて欲しいと言われている。ハロルドもそれは言葉通りの意味だとは思っている。思ってはいるが。
(王族から言われたできればって、さっさと確認しておきたいんだよな。何か起きないとも限らないし)
アンリも妙に目の付け所が的確な時がある。それが彼の側近の「なんとなく」という野生の勘が理由で発見されるケースが多いことをハロルドは知る由もないけれど、彼からすればそれはアンリの忠告を聞く理由にはなる。
「ハロルド様、あね……エリザベータ様の準備は整ったそうです。聖騎士も数名共に来ていただけるとのことですが」
「ウィリアムさんが選考してつけてくれたっていう……?マリエさん優先じゃないのか?」
「何を言っているの?彼はフォルテ教の神官よ。アメシスト卿が選んだのであれば、優先するのはその神子たる貴方となるに決まっているでしょう」
小さな声で、怪訝そうに口に出した疑問を女性騎士のような服を着たエリザベータが少し呆れたように答えた。その声もハロルドに辛うじて届く程度の声だ。いきなり近くに現れたということの方に驚きながらも、いつもとは違う凛々しい姿に目を奪われた。
「すごいな。凛々しくて、綺麗だ」
「褒め言葉なのかしら」
「もちろん。思わず呼吸を忘れたほどだ」
そんなハロルドとエリザベータの注意を引くためにミハイルはパンパンと手を叩いた。
「仲が良くて結構。森へ行く際の準備、その最終確認お願いします」
「わかったよ」
ミハイルに促されて、持っていく道具や薬品、武器などの最終確認をする。そして、それが終わると複数人で森の中へと足を踏み入れた。
いつも読んで頂き、ありがとうございます!!




