9.その頃の女子組
男子組がそんな感じで過ごしている間、女子組の馬車はシンとしていた。
居心地悪そうに座るマリエ、鏡をじっと見つめているエリザベータ、書類を見ている珠。マリエは我関せずといった様子で鏡を見続けているエリザベータの前で、「気まずい!」と思っていた。
エリザベータがどうとも思っていないことは理解していても、恋人の元婚約者だ。自分がぶち壊したといってもいい縁談の被害者の前に座らされて「早く到着して〜」という気持ちでいっぱいだった。
「にゃ……?エリザベータ様、それ覗き見バットくんやない?発売中止になったはずやけど」
「その前に購入していたの。あの子が浮気しないか、誰かに迫られていないかすぐにわかって便利でしてよ」
名前にどことなく不安な気持ちが湧き、「のぞきみばっとくん?」と問うと、エリザベータが何でもないようにその手鏡を中心に差し出してみせた。どれだけ鏡で自分の顔を見ているんだろうと思っていたマリエの疑問は、そこに映るハロルドたちの映像で解決された。
「小型飛行魔道具で現場の様子を読み取って、こちらで見ることができる仕組みになっているの」
「監視カメラ……?え……、ストー……いや婚約者だし。いやでも……ダメ、では?」
鏡とエリザベータを交互に見て、顔を青くするマリエに珠は「まぁ、販売中止になったんは、個人の生活に干渉してプライバシーを侵害しとるって理由やからなぁ」とのんびり答えた。
「ダメじゃん!!」
「ハルはいいって言いましたわよ」
「懐広すぎか!?天使!?」
なお、実際は言っても聞きそうにないという判断の上、「これをのめるなら使ってもいい」と契約書のご用意をされている。
「排泄やお風呂を覗かない、他の人間には使用しない、俺の私生活を覗くことに夢中になって自分の生活を疎かにしない。あと諸々。一応中身見て確認して」
そんな主張をしたハロルドはブライトの件を知っているからこそ、暴走されるよりはマシと受け入れられていた。ハロルド的には見られて困るものもない。大体のことは婚約者であるエリザベータに隠すほどのことでもない。
「倫理観どうなってるのこの国」
「いやぁ、この国の倫理観は一部除いて割とマシやろ〜。エリザベータさんがぶっ飛んどるだけやで。狂っとるヤツっていうんはどこにも一定数居るんやわぁ〜」
さらりとエリザベータを狂人扱いする珠も強者である。
目の前の本人公認ストーカーにこれ以上言うことも見つからないが、何か少しモヤモヤした感情を覚えるマリエが普通なのかもしれない。
エリザベータからすれば、これは婚約者としての特権であるから他人にとやかく言われる筋合いはない。ハロルドが同じことを求めても受け入れるつもりである。ハロルドは普通なのでそんな発想がそもそもないのだが。
「ハロルドくん、エリザベータ様が相手で本当にいいの……?」
しれっと観察に戻っているエリザベータを見ながらマリエはそう呟いた。珠は「本人が受け入れとんねんからええねん」と自分の髪を指にくるくると巻きつけた。
いつも読んで頂き、ありがとうございます!!
ちょっと落ち着いたのでまたゆっくり書いていきたいと思います〜!




