7.王子様達も一緒2
アルスの呪いのこともあって、男女で馬車が分かれた。珠が合流したのは、「ハロルドさんに付いてったら、商売上手く行きそう!あと、災害地の復興に食料品やら医療品は必須やろ?」という理由である。なお、その発言の際に手を揉んでいた。
そんな、やや絡みづらいメンバーでハロルドの領地へと向かう。
ハロルドが住んでいた村と違ってアンバー領(旧ハンベルジャイト領)は王都からそう離れてはいない。馬車で二日〜三日といった場所である。それだけ過去のハンベルジャイト伯爵が有能であり、また王家の信を得ていたということであろう。そんな土地を渡されたのだから、ハロルドにかかっている期待の大きさも知れるというものだ。本人は「復興にスキルが必要なら、まぁ仕方ないか」くらいに思っているが。
「それにしても、スタンピードに旱魃まで加わってるのはブランがいなくなったせいだけじゃない気がするな」
「ああ、ハンベルジャイト領にいた精霊か。木を守り、適当に信仰するだけで力を貸してくれる存在を手放して得たものが、神子の怒りと娘のやらかしなのだから当代の愚かさが知れるというものだ」
「え、この感じハロルド様って精霊とまで知り合いなんですか」
ミハイルの言葉を肯定して「王都の家の前で拾った」とハロルドが言えば、妖精達も「ぼろぼろだったわね」だの「貧弱」だの「よわよわぁ」だの割と容赦のない感想を言った。実際、人間族の子供でも容易に殺せそうなほど、当時の彼女は弱っていた。
とはいえ、スタンピードは前領主が対策を何も取っていなかったせいであるし、風の精霊が旱魃などという手段を取れるかと尋ねられればハロルドは首を捻るしかない。
(実際に現地で見ないとわからないけど、神罰ってわけでもない気がするし)
神罰執行があったのであれば、この度の褒賞に女神フォルテが何らかの抗議をしていただろう。マーレ王国の惨状からしてハロルドに危険があるのであればタダでは済まないことがわかる。であれば、今回は困難があるとしてもハロルドにならば解決できる案件なのだろう。少なくともハロルドはそう解釈している。
「ハルぅ〜、ヒマ!!」
「ずっと馬車移動だしね。仕方がないよ」
リリィの訴えに苦笑しながらそう返して、その頭を撫でる。アルス達との旅は問題だらけだったが、暇にはならなかった。トラブルでいっぱいだったからだ。ハロルドがトラブルに巻き込まれることは妖精達の活躍の場であることも示している。なので彼からすれば「平和でいいよね」という気持ちもある。
仕方ないなぁ、と言うように取り出したものを渡すと、その表情はパッと明るくなった。
「なんだ、それは?」
「干した葡萄です」
そのレーズンは、ルートヴィヒからもらった葡萄の余りをハロルドが雑にドライフルーツにしたものだ。職場にいた女子社員がオーブンで焼いて乾かせばできるというのを聞いたことがあったため、魔法で再現すればできてしまった。どうやらハロルドの魔力が使われていれば、彼の育てた果物でなくてもある程度は美味しくいただけるらしい。
「葡萄はあの瑞々しさがあってこそだろう!?なぜ、なぜそんな真似ができる!!」
信じられないとばかりに目を見開くジョシュアに「え。余って腐らせた方が勿体無いじゃないですか」と至極当然のように答えた。
ハロルドは別に裕福な暮らしをしてきたわけではないので、食品の無駄は彼が嫌うところである。
「なるほど、確かに……?」
試しに一つ、ジョシュアも食べてみたようだが口に合わなかったらしくしょぼしょぼしていた。
「やはり、葡萄は瑞々しい状態が一番だ」
「そうですか?僕は結構美味しいと思いますけど」
ミハイルは「まだたくさんあります?あ、作り方も知りたいです!」と元気に言っていた。
「葡萄はないけど、りんごなら」
エリザベータもドライフルーツを好んでいたので、母親がちがっても姉弟で似るところがあるのだろうか、と思いながらハロルドはそれを差し出した。
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