6.王子様達も一緒1
ハロルド達が領地に向かうための馬車は王家が用意してくれるということで、王城へ向かうとそこには若干距離がある第二王子ジョシュア・イヴァン・エーデルシュタインと召喚された異世界産聖女の光島万里絵がいた。
ハロルド達を見て思い切り「うげ」と口に出したジョシュアは背後から忍び寄る王妃パトリシアに扇で殴られた。
「お前という子は!恩人に向かって何を!言って!いるのです!!」
「いた、痛い!!母上、加減を!!マジで痛い!!」
「痛くしているのですジョシュア!!」
女性が殴っているにしては非常に鈍く、重い音がする。バシバシなんて可愛らしい音ではなかった。ハロルドがそっと目を逸らすと、「パトリシア様は拳闘士のジョブスキルを持っておられるのよ」とエリザベータが耳打ちした。
「それに合わせて、身体能力も非常に高くていらっしゃるわ。おそらく本当に、とっても痛い」
「とっても、痛い」
母親に叱られて若干泣きそうなジョシュアを見てどんな反応をすれば良いか分からなかったハロルドだけれど、その話を聞くと泣きそうなのは単純にめちゃくちゃ痛いからのようでなんともいえない複雑な心境になった。
「というか、あれが今二人が近づける一番近い位置なのかな」
アンリの件で深く関わっていたため、かけられた中では一番軽度ではあるが、マリエにも呪いがかかっていた。アルスは「きちんと魔王の処理をすれば消してあげるよ」と言っていたが、数百年に一度の周期で現れる魔王と呼ばれる強大な力を持つ魔物を、人は約三十年もの間倒すことはできなかった。そのせいで災害級のそれは今なお、かろうじて封じ込めることができているだけで討伐に至ってはいない。
そして、マリエがアルスにかけられた呪いが「異性接近禁止」の呪いである。異性に魅了なんて使うのが悪いというのが理由らしい。神にどんな手続きがあるかハロルド達人間が知る由もないけれど、決まり通りに申請されたそれはフォルツァートでも消すことができず、それは彼女の下腹部に花の模様として刻まれている。
ただこの呪いに良いところがあるとすれば彼女に近づこうとする男の方にも罰則があるところである。例えば、マリエを襲うために男が近寄ったとすれば男の方がその罰則を受ける。
「まさか、異性に近づくと気絶する程度の小さな雷が落ちるなんてな」
アルス自身が医神と呼ばれる存在であるからか、誰も命に関わることにはなっていない。けれど、呪いは的確な嫌がらせになっている。性的な企みをしていた人間にはその機能を失わせる、性的快楽を失わせることや権力を求めて動き回った者に対して顔などの隠しにくい位置に呪いの印をベッタリとつけたりと、それはもう活躍していた。神職者が顔面に呪いを受けるなどと不名誉でしかない。自身で解呪術も使えない者に誰も信頼は寄せないし、どんなに化粧や仮面で隠したとしても、蛍光色で浮かび上がって結果的にさらに目立つという有様だ。ハロルドは「これが神罰じゃないんだ……」と少し恐ろしく思った。呪いでこれならば、フォルテの神罰はもっと大規模なものだろうと想像がついた。
「それで、どうしてジョシュア殿下やマリエさんがここに?」
首を傾げるハロルドとエリザベータ、ミハイルに「同行するからだよ〜」とのんびりとしたブライトの声が聞こえた。
「おはよう。ジョシュア殿下たちね、ちょっとおいたが過ぎたから国のために走り回れって王太子殿下にせっつかれてるの」
つまらなさそうに、「慈善活動と、災害地の復興支援、それから聖女の修行も兼ねてアンバー領に派遣されることになったんだって」と説明する。
「ふーん、僕らだってハロルドくんと遊びたいのにさ、ルイと一緒にお仕事三昧だよ!」
「ブライト、俺たちそもそも遊びに行くわけじゃないよ」
「わかってるよ。でも、休暇って友達と遊ぶもんじゃん!!」
ルートヴィヒもアンリが働きすぎないように、そしてジョシュアが外に出る分仕事が増して機嫌が悪い。
元々こんなはずではなかったのに、と思いつつも彼らは仕事をこなし……忙しすぎてルートヴィヒが婚約者からの手紙を無視することになっていた。中身は嘆願であったが、「あの女の手紙など読んでも体調が悪くなるだけでは?」と放置していた。それでも面倒ごとだと困るから、と最終的にブライトに読ませて報告をもらっていた。そしてその内容を聞いてから、必要があれば現在彼らを追い詰めている張本人のアンリの元に手紙が届き、アンリは追い詰める資料が増えてにこにこである。じわじわと甚振るように権力を削ぎ落としていた。決定的な何かをすれば彼らは即座に処分されるだろう。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
ブライトは見送りに来てるけど、ルートヴィヒは仕事してる。このあと見送り行ったのがバレて喧嘩してたまたま部屋の近くを通ったエヴァンジェリンにお説教くらう。




