34.恋する暴走特急
「ブライトさまぁ〜!あ、な、た、の、エリザベータですわぁ〜!!」
学園に入った瞬間駆け寄ってくるエリザベータの前にあからさまな障壁が立ち塞がった。土、氷、結界の三重である。それを作ったハロルドは友人に向かって問いかけた。
「ブライト、なんか……これが例の?」
「そう」
取り繕うことすらなく突撃してくるエリザベータを見ながら、「兄上が可哀想だ」とルートヴィヒも流石に同情を禁じ得ない。アーロンはちょっとだけ「でもルイの婚約者も性格腐ってたよなー」と思ったが黙っていた。本人もそう思っているだろうなと察せられたためである。
土の壁という第一段階を突破した後に見えた氷の壁を見てそれも魔法でぶっ壊そうとしている姿は少しばかりホラーらしく、新入りのルクスとルアはドン引きしていた。ローズたちはもっとヤバい連中を見てきたため「ハルだけがこんな目に遭うわけじゃないのね」などと言い合っている。
「僕は、こういう、力ずくで来て、誠意を通さないやり方、嫌い!!」
嫌悪感バリバリの声である。
「婚約は解消の流れになっておりますわ!!」
「そうなの?」
「いや、ブライトの身を守る意味でまだ続行の構えだ」
ブライトの家族がタンザナイト伯爵家に彼を売り払う可能性があるので、様子を見ているらしい。
「最悪、王妃殿下の実家……ルビー侯爵家に養子縁組する案も出ているからそのあとだな」
「ああ……。現王妃を輩出した侯爵家が相手ならば無理やりに手籠にもできないもんな」
「そこまでやらなきゃブライトの貞操が守れねぇのか。可哀想」
アーロンの言葉に「クソ、僕が可愛いばっかりに!!」と言うブライト。そんな彼を見ながらハロルドとルートヴィヒは「おまえな」みたいな顔をしていた。確かにブライトは見た目が可愛いけれど、それを自分で言うのはどうかと思う二人だった。
「というか、自分は散々ジョシュア兄上に無関心だったのに、今更恋をしたから婚約の解消を、だなんて簡単に行くわけがない。ちょっと腹立たしい」
そんなことを言いながら小声で「それはそれとして、兄上には仕事をもう少し負担してほしいが」と続けている。相変わらず、アンリがルートヴィヒに任せている仕事の量がそこそこあるらしい。任せられた仕事はきっちりとこなす真面目な第三王子はその辺りだけジョシュアにちょっと文句を言いたかった。
「というか、教室にたどり着けなくて普通に邪魔!仕事だけじゃなくって勉強でまで僕の足を引っ張らないでほしいんだけど」
ブライトの言葉に少し傷ついた様子を見せた彼女だったけど、どんな言葉に変換されたのかすぐにその頬を赤く染めて去っていった。
「何あれ」
「どうせ、“わたくしを迎えにくるためですわね!!”とか思ってるよあの女」
「流石にそれはねぇだろ」
「あるんだよ!!僕が冬季休暇中どれだけ付き纏われたと思ってんの!?」
その言葉の響きは悲痛である。
そしてブライトの言葉は間違ってはいなかった。彼女は「(結果を出していつか迎えに行くから)僕の足を引っ張らないでほしいんだけど」という言葉に勝手に変換していた。
ブライト「怖い」
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