31.仲直り?
スノウと名付けられたフェンリルは人型にはなったが、尻尾を上げて威嚇するように「ガルル」と唸った。
「おまえが!名前を!!つけないから!!おれが言葉を伝えるのにどれだけ大変だったと思ってるんだ!!」
「じゃあ名前つけろって言えよ」
「はしたないだろ」
「必要なことなら言葉に出せや」という顔のアーロンと、「神獣が名を強請るなんて」とぷいっと顔を背けるスノウ。人間でも国によって風習が違うのだから、人間と神獣ならば価値観が違っても仕方がない。それにしても、とハロルドはアーロンの塩対応に首を傾げる。
「アーロン、なんでスノウに対して厳しいのさ」
「コイツ、こっちがめちゃくちゃ葛藤して悩んでるのに“覚悟を見せよ”とか言ってくるし、狼だとか言うのに卵から生まれるし、めちゃくちゃなんだよ」
「仕方ないだろ!おれは宿主の覚悟が定まらないとそもそも生まれることができないんだから」
三者三様に「なんだ、それ」という顔をする。そんな彼らにスノウは腕を組んでむすっとした表情を見せた。コロコロと表情が変わる姿は子供の姿であることもあって愛らしい。
「神獣には各々、求める覚悟があるんだよ。それが基準値に達してようやく卵から生まれることができる仕組みなんだ。姿だって自分で選んだ宿主の適性によって、どんな姿になるのかが決まる。おれが神狼として生まれたのはアーロンに対応したもんだ、コイツのせい!」
「はぁ……。なんでアーロンくんを選んだの?」
「生き残る意志が強かった。魔力も多くてこう、しっくりする感じがあったし」
「魔力の波長が合うのは大事よねっ!」
「ボク、ハルの魔力好き」
「ウチもぉ〜」
妖精たちが魔力の波長が合うなら仕方がないと言い出して、アーロンを「仲直りしなさいよ!」とぐいぐい押し出すようにしてスノウの前へと誘導した。
「名前付けなかったし向き合わなかったのは悪かった。ごめんな」
「ふ、ふん!許してやらなくもない!」
「なんだろう、グレンと同じ気配を感じる」
嬉しそうに揺れる尻尾と微かに漏れる「わふふん」というちょっと嬉しそうな鳴き声。そのうち「おまえのことなんて別に好きじゃないんだからな!」とか言いながら嬉々としてアーロンを助けようとする気がした。対応が塩だったとはいえ、アーロンはその真っ白な毛並みを美しく保てるようにマメに世話を焼いていたし、犬が食べられるもの・食べてはいけないものを調べたりもしていた。文句を言いながらも面倒見が良い宿主のことはそれでも好きだったのかもしれない。
「そういえば聞き流しちゃったんだけど、神獣云々って教会から茶々入ったり、国から何かあったりしないの?」
「一応報告はしてるんだけど、神罰とかの件ですっぽ抜けてそうな感じはする」
ハロルドの言葉は正解だった。
三人がストレス発散にと冒険者活動をしているころ、とりあえずの差配が終わって、部下からの報告書やハロルドの報告のメモを見直した王城では「神獣ぅ!?この国に現れたのは120年ぶりだぞ!?」と大騒ぎになっていた。
「私の友人たち、規格外過ぎ……?」
「私からすれば、おまえも相当だよ。ルイ」
エドワードはアンリの言葉に頷いた。
特に神から恩寵を受けたわけでもなかったはずなのに非常に強い浄化系統のスキルを持ち、神託を受けることができて、それなりに強いスキルまで授けられた。
学園での儀式の後、再度確認をしているわけでもないので、彼もまた「女神の寵児」だとはまだ気づかれてはいない。その価値を知らしめたいと本人も思っていない。
(面倒なことは起こらないのが一番良いな。王位を狙いたいわけでもないし)
本人だけが女神フォルテの加護に気づいていて黙っていた。継承権争いなんかしたところで自分が良い王になれないことを彼はよく知っていた。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
感想もありがとうございます!!
ちなみ神獣に名前を付けることで仮契約から本契約に移行した感じ。
フォルテはアルスと違って「加護をあげます」って宣言して加護を渡してるのでルイは自分が加護を持ってることを自覚してる。




