21.呉越同舟3
「正直なところ、主人と国が助かれば主人以外の王族なんてどうなっても良いのだが」
それだけでなく、他国民であるが故に今目の前にいる自分の家族だってどうでもいいんだろうとあたりをつけて嘆息する。生き残る、という観点で言えば彼が護衛してくれているのは非常にありがたい。だが、あまりにもやろうとしたことや思想が相入れない以上、ダンジョンから出た後が心配である。
(こんな場所に閉じ込められてなかったら絶対に薬なんてあげなかったよ)
マーレ王国は話を聞くにやらかし王国なので、代わりが効くなら滅ぼした方がいいのでは、と思う気持ちすらある。実際にそんなことをすれば国が荒れる。そして、国が荒れれば辺境にある自分の村が心配だ。逃走する人間は少なからず出るだろう。そうすれば、すぐに応対する羽目になるのはオブシディアン辺境伯とその領民になる。
隣国が荒れても困るし、元気になったら十中八九要らないことをしでかす。迷惑な国である。
(国民性によっては民だけ助けられないかな、と思わなくもないけど、正直なところそれって俺の関われる範囲を超えてるし)
もしハロルドが本気で国を取りに行こうとしたならば、相応の理由があると追従する者たちもいただろう。しかし、ハロルド自身は自分に付き従ってそんな物騒なことをする人間がいるだなんて思っていない。一国を束ねたいなんて思えていたら、それこそ彼はもう少し生きやすかったかもしれない。
ハロルドの中身は小市民的だ。それなりに利己的で、ちょっぴり人がよく、まぁまぁ真面目。そうした普通の人間なので「滅びないかな」とは思っても口にはしないし、「滅ぼそう」と行動することもない。
進めば進むほど、道は暗くなっていく。大きな広場に出たと思うと巨大な岩がいきなり動き出し、人型になる。
「……このダンジョン、大きい魔物しか出ないのか?」
洞窟っぽいのに、と恨みがましげな声でユリウスが先ほどと同じように剣を振るうけれど、コアを壊さなくては自動回復するような魔物は苦手らしく舌打ちしていた。
「リリィ、ミノタウロスはアレだったけどゴーレムなら俺たちでもやれないか?」
「んん〜……、イケるとおもーう」
目配せしてリリィと共に足場を崩す。それで身体が傾いた瞬間を狙って変形させた土を使って体の結合部あたりに杭のように打ち込んだ。
「ネモフィラ」
「任せて」
名前を呼ばれたネモフィラがハロルドと共に魔法を使う。氷が矢のように飛んで、その核を貫いた。すると、崩れ落ちるように岩がゴロゴロと転がっていった。
一応、安全のために鑑定をすると、魔石と煙水晶という文字が浮かび上がったので取り出した。
(何かに使えるか)
大きいものではなかったのでポケットに入れる。声をかけられて、さらに先へ進むために足を動かした。稀に後ろからくる敵を焼き殺してもらっているので文句を言っていいものかわからないが、背後に敵のドラゴンがいるというのが不安に感じた。
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