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〈元〉第一王子の回想2・手のひら返し




 いや、追放とは言えないのかもしれない。彼は隣国の王族に望まれ、もう、私に教えることはなにもない、と去っていったのだから。……周囲からは、そう、伝えられた。師匠は私に何も言わずに、辞めてしまったから。

 だが、師匠は私に対して、いや、誰に対しても、そんな薄情なことをする人じゃない。礼節を重んじ、音楽は人々の心を救い、強くするもの、と「人」のために演奏をしていた彼が、こんなことをするはずがない。

 しかも、こういった唐突で、「決まったこと」として相手の感情を省みず、相手が従うのが当然のように物事が進められていく感覚には覚えがある。

 これは、どう考えても陛下の仕業としか思えなかった。

 隣国の王族に師匠を紹介することも、王太子である私の講師を奪うことも、陛下以外の誰にできるだろうか?

 師匠が私と簡単には会えないようにし、私が音楽を学ぶ時間を最低限にし、音楽に執着する私が帝王学に力を入れるよう、陛下は次々と手を打っていった。


 その一つ一つが決まっていく間の心境は、どう言えば、伝わるだろうか。

 順々に四肢がもがれていくかのような。

 少しずつ、土に埋められていくかのような。

 目の前で宝物が壊されていくのを、ただ、呆然と眺めているかのような。

 苦痛と息苦しさ、無力感。

 気づけば、周囲からの目も変わっていた。

 陛下の采配を見ていれば、私が音楽に傾倒することをよく思っていないことなど、すぐ分かる。


 賞賛は批判に。

――王太子たるもの、いつまで遊び呆けるつもりなのか。


 憧憬は侮蔑に。

――また、間違えています。二つ下のアルトューヤ殿下は理解が早いというのに……。


 あまりの変化に私が戸惑い、適応できずにいる、そのたどたどしい姿を嘲笑する始末。

 ……本当に、人間はクズだ。


 そして、学園に入る前、陛下の決定で婚約者が決まった。


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