困惑する〈元〉第一王子
「な、なんだ? こ、ここはどこだ?」
私、王国の第一王子フィルメリアは困惑していた。
つい先程まで、私は学園にいた。授業も終わり、帰ろうとしたところを婚約者のカティナベル、第二王子であるアルトューヤ、と立て続けに声をかけられ、どちらも拒絶し、周囲の反応を気にして足早にその場を立ち去った。
そして、建物を出たところにある、馬車を停めるスペースに続く階段を降りようとした時、後ろから聞こえた足音に私は慌ててしまった。二人のどちらかが追いかけてきたのでは、と足を止めるどころか早め、そのまま背後を確認しようとし、足を滑らせた。
正直言って、間抜けだ。自分のことながら、滑稽で無様だ。
しかも、止めとばかりに人が一人突っ込んできて、何かが割れるような音とともに吹き飛ばされた。
見えたのは一瞬だったが、相手も吹き飛ばされてきたようで、黒髪の後頭部が見えた。あの少女に何があったのかは分からない。もしかしたら、魔法の爆風かなにかで飛ばされたのかもしれない。
だが、そんな事はどうでもいい。
問題は、私の体である。
私は手を握った。目の前の見慣れない、白くてふんわりした、一応、指らしき不格好な物がついた手とも呼べない何かが、握りしめられた手の形をとる。
私は手を開いた。目の前の、ぬいぐるみと呼ぶのもためらわれる、不格好な形の何かが、まるで開かれた手のような形をとる。
嫌な予感に、冷や汗が出る。……冷や汗が、ちゃんと出ている?
心臓がバクバクと音を立てる。……心臓が、ちゃんとある?
未知への恐怖で、体が震えた。
――一体、何がどうなっているんだっ?!
もうしばらくして、私は気づく。自分の身体が不格好で滑稽な、壊滅的な仕上がりの布製の人形になっていることに。




