第63話 不浄人
「待ちくたびれたわぁ~。もういい?」
バロルネスは余裕そうな笑みを作っている。
俺の推測では、バロルネスはおそらく、ネクロマンサーだ。
追加でくる攻撃にも注意しなくてはならない……!
「いくぞ……!」
俺とセラは走り出す。
デュラハンも高速で移動し、俺達に槍を振るう。
「《腐乱の刃》……!」
俺のデコンポズ=エッジはデュラハンに躱される。
そこで生まれた隙をつきセラが攻撃を放つ。
「《聖角》……!」
聖角での刺突だ。
しかし、デュラハンは槍で攻撃をいなす。
「戦闘能力が高いな……。流石、封印されてただけはあるか……」
俺は呟く。
「セラの速さについてくる……。首なしさん速い……」
セラも驚きを口に出したようだ。
そこからも、お互いに一歩も譲らない戦いが続く。
唐突にバロルネスが声を上げる。
「あらあらぁ~。そんなものかしらぁ? デュラハンの力はこんなものじゃないわよぉ? 《死霊強化》……」
バロルネスの詠唱が終わると、デュラハンの能力値が一気に引き上がったのを感じる。
「おいおい嘘だろ……。まだ強くなるのか……」
俺は素直に驚嘆を口から出す。
クソッ……本当はこの技は使いたくはなかったんだが、ここまでの強敵となると仕方ないか……。
俺は心の中で覚悟を決める。
そこからは、能力値の上がったデュラハンに俺とセラは防戦一方となる。
「セラ……! こんなこと頼むのは申し訳ないと思う。だが、どうしても時間が必要なんだ……! 少しの間、こいつの相手を一人でできるか……?」
俺はセラの瞳を一瞬見る。
「セラ……お肉食べれば、もう少し頑張れる……」
セラは真剣な表情で呟く。
「わかった……! 俺が干し肉を食う時間を稼ぐ。その代わりすぐ食べてくれよ……?」
俺は再度、《カースストレング》で身体能力を引き上げ、ショートソードでデュラハンと戦う。
デュラハンの攻撃は一撃一撃が重い。
だが、俺も負けられない……!
何度も斬り合う……。
途中で、俺の腕の感覚がなくなってくる。
その一瞬をデュラハンは見逃さなかったのだろう。
ワンテンポ速く、デュラハンが踏み込んでくる。
まずい……!
ガキンッ!
高音の衝撃音が響く。
「ヴェル様! ありがとう! セラ……エネルギー回復! ここからは任せて……」
セラは聖角で、デュラハンの槍の攻撃を防いでいる。
「助かる……。ちょっと待っててくれ」
俺は戦線から離脱し、一人で集中する。
「今までは使ってこなかったが、やるしかない……。《ネザディズ=カース》と《ヒュドラズ=ポイズン》を合わせて自分に使う……。身体能力が足りないなら、自分の能力を底上げしてやる……!」
俺は集中する。
配分を間違えればいくら不浄宮の吸収の能力があっても、何度も挑戦できるものではない。
いや、セラが一人で戦ってるんだ。こんなところで時間を使ってられない……!
「《合成呪法》《ポイズン×カース》……身体能力強制上昇……!」
不浄宮の自動吸収をオフにし、身体の中に毒と呪いを満たしていく。
自分の身体が自分のものではなくなっていくようだ……。
く……苦しい……。
だが、力が……能力が上がる……。いや違うな……。
まるで、人間ではない存在になっていくような感じだ。
このままいけば……。
「あらあらぁ? ヴェル……あなた『不浄人』になろうとしているのかしらん? それはダメよ……。厄介だから」
バロルネスが指を鳴らすと同時に、俺の周囲にスケルトンの軍勢が現れ、剣を振り下ろす。
「ちょっと待てよ……。もう少しなんだからよ……」
俺は血を吐きながら呟く。
すると、スケルトン達がおびえたように一瞬ひるんだ。
「な、何をしてるの⁉ 早く、斬り殺しなさい!」
バロルネスの声が響く。
バロルネスの声に合わせて、スケルトンが剣を振るう。
しかし俺は、その一瞬前に、猛毒と呪いを纏った斬撃でスケルトンの軍勢を吹き飛ばす。
「はぁはぁ……。ったく、ちょっと待てって言ってるのによ……」
俺はショートソードを軽く振る。
ショートソードからは猛毒と呪いが飛び散る。
「ヴェル……あなた……。そんな……。不浄人に……」
バロルネスは驚いて言葉を失っているようだ。
「不浄人……? ってのになれたみたいだな……」
俺は自分の身体を見回す。
体色は毒の紫と呪いの黒が斑に入っている。
髪の色は黒髪がベースで、斑に灰色が混ざっているままだ。
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