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異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜  作者: 青山喜太


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交渉決裂

「マリデ・ヴェルデ…!」


 アイラはそう忌々しく言いつつ、マリデを冷静に見据える、アンとカミルも同じく、混乱することなくマリデ睨みつける。


「ふぅ、潜入は成功だね。まったく、ドンキホーテはいつもよくやってくれる」


 その言葉でアイラは気づく先ほどの闘気による光線の攻撃はこの男が、ルジェルーノに近づく隙を生み出すものだったのだと、現に今まんまとジャンをドンキーホーテの元に送ってしまった。


「ここで一つ提案が僕からあるんだが?まあ、そこまで殺気立たないでくれよ」


 マリデは飄々とアイラ達3人の殺気を気にすることなく話し始める。この太った男が何を言おうとしているのか、アイラ達はいつでもこの男を殺せる準備をしながら、耳を傾ける。


「ここで諦めてはくれないかな?」


 何を言うかと思えば、とアイラは鼻で笑う。


「無理よ、ここまできて諦めろですって?あなた非常にユーモラスな人なのね?」

「そうかなそう言われると嬉しんだが」


 ーーカミル、そうアイラが男の名を呼んだ時、カミルは腕を合わせ印を結んだするとルジェルーノはマリデを両腕で掴み取った。


「白痴の魔王の奏者の一人をここまで使いこなすとは、かなりの腕の立つ召喚士の様だね…だが…」


 マリデの目は普段から細目と言われているほど、細く開いているのか閉じているのか判別のつきようがない。

 故に視線がどこに向かっているのか分かりづらく、どこを見て話しているのか判断がつきづらく、不気味な印象を与えていた。

 誰もマリデの目が開くところを見たことは無かった今日、ここにいる3人の敵対者以外は。

 その男の目は怪しく紅く発光していた、まるで全てのものを見下し嘲笑っているかのようなその目は、見るもの全てを震えあがらせるほどの力を持っているようで、アイラ達はその目を見た瞬間触れてはいけない何かに触れてしまったような気がした。

 例えるなら開けてはならぬと言われた箱の錠前、それをすでに外してしまったかのような…

 一瞬のうちにルジェルーノの両腕が黒い何かにより破壊される。黒い触手だ、マリデと名乗るこの世ならざる何かの背中から、触手が生えていた。それは、影のように黒く、吸盤は存在しない、まるで黒い鞭のようなしなやかさで高速に振るわれていた。


「あなたはいったい…」


 いやもう、そんな野暮なことは聞くまい、アイラはそう言いかけてすぐに考え直すと、すぐさま背中から緑色の光の翼を展開し、腕をマリデの前に突き出した。するとアイラの腕から岩の石柱が突如として生成され、マリデを吹き飛ばした。


「アイラ!」

「アン!あなたはエイダを!あいつは私が!」


 アンはうなづきカミルと共にエイダのいる花畑にルジェルーノを向かわせた。アイラは光の翼で飛行しながらマリデが吹き飛ばされた方向に目を向ける、未だ土煙が立ち上り状況が明確になっていないのはアイラにとって、不安を駆り立てるものでしかない。

 土煙が晴れる、アイラは目を凝らし状況を理解しようと見渡した。死んでいるのならばそれに越したことはない、だがその淡い期待は背後からの声により打ち消されることとなった。


「そういえばこの巨大な穴も君が開けたのかな?素晴らしいよ実に…」


 太った男はいつのまにかアイラの背後に立ち片手に頬をつきながら、そう言い放った。


「くっ!」


 アイラは苦し紛れに再び石柱を出す、しかしそれは当たらない。


「ここでは暴れられないだろう、君も僕も」


 マリデはそう言うと、アイラの首を強引に持ちアイラ達が生み出したであろう穴の壁にアイラを叩きつけながら、妖精の里を出た。外に出た瞬間アイラはマリデを蹴り上げ拘束を自力で解いた。そして地面に一切無駄のない動きで着地すると地面に手を合わせる。

 すると巨大な石柱が何本も生み出されマリデを襲った。マリデは石柱などものともせずに背中から生えている影のような触手で石柱を叩き壊した。


「クッソ!当たらない!」


 アイラは悪態をつく、どうしても有効打が与えることができない、それに苛立ちを覚えていた、加えて魔法障壁により防御を張っていたとはいえ先ほどの壁に叩きつけられた攻撃は相当なダメージを負うものだった。


「おや?君…なぜ自己回復をしないんだい?」


 ――まずい、アイラは焦りの表情を見せる。その表情を、見てマリデは確信した。


「そうか!君はエイダ君とは違う!不老不死ではないのか!ならば…なおさら降伏した方が身のためだ」


 その言葉にアイラは笑いで返す。


「今更、降伏ですって?冗談もいいところよ!私達の大義のために!私は!!諦めたりはしない!」


 アイラは片方の肩甲骨から生えている緑色の光の翼をさらに光り輝かせると、両手を地面に置いた。

 すると地面は盛り上がる。それは丘になり、山となり、ついに五体を持つ人の姿を持った岩の人形とかした。


「ゴーレムか…」


 マリデは呟く、そのゴーレムは森の木々を軽く超え、見ただけで人を圧巻させるであろう立派な体格をしていた。


「そうよこれが私の最高の技、あなたに受け止めきれるかしら?」


 マリデは笑う赤く光る目を見せながら。


「玩具のように叩き壊してやる…」

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