メルジーナ先生を追え
トーンレンス、それはソール国の中でも有名な本の街。数多くの出版社がこの街に存在しており、ここで多くの本が印刷され、ソールの国中に行き渡るのである。そのような性質上、この巨大な街には多くの作家が住んでいる。なんでも出版社が近くにあれば連絡も取りやすく、何より〆切が近くなってもすぐに持っていける、という理由で住んでいるとかいないとか。またある種この街に住めること自体が作家にとってステータスとなっており、ここに住めるようになったら売れっ子の証であると言われている。
そんなトーンレンスの街にエイダ達一行は足を踏み入れた。
「ここがトーンレンス…本屋さんがたくさんある…」
足を踏み入れたエイダは率直な感想を述べる。そうこの街、トーンレンスは本の街という名前の通り、本を街の資源としている。本のジャンルごとにその専門店がある有様であった。そのせいで街の中の本屋はとてつもない数が存在しており、トーンレンスにない本はないとまで言われている。
「確かにすげーな、噂には聞いていたが。ここまで本があるとはな。」
ドンキホーテは、楽しそうに周りを見渡しそう言った、心なしか楽しんでいるように見えた。
「全くはしゃぎおって…」
そんな2人に水を差す、一匹の猫がいた。アレン先生である。アレン先生は浮かれた仲間に本来の目的を思い出させるべく。ドンキホーテの肩に乗りテレパシーで語りかける。
(で、どうするんじゃ、ドンキホーテ。浮かれている場合ではないぞ。エイダもじゃ!)
(ご、ごめんなさい先生!つい…)
エイダはすぐに謝る。しかしドンキホーテは対して反省する様子も見せず。言った。
(まあ、いいじゃないか、こんなところ滅多に来れないんだぜ?)
その言葉にアレン先生は不安を覚える。
(アホ!飛空挺でのことを忘れたか?!街中で襲われたらどうするんじゃ!)
(そこら辺は大丈夫だぜ!さっきから気配を探っているが不審なところはないしな。)
それならば、とアレン先生は少々不服ながらも納得する。
(しかし、目的を忘れてはならぬぞ。)
(わかってるよ先生!)
そう言って、ドンキホーテは本屋の本を読み始めた。
「わかっておらぬではないかー!」
思わずアレン先生は大声を出し、周りに注目される。アレン先生は慌てて口を肉球で塞いだ。エイダはそれを見て思わず吹き出してしまった。
「悪かったよ先生。」
「まったくドンキホーテ、お主は本のことになると目が眩むようじゃな。」
とりあえず本屋がたくさん並んであった通りを抜け今エイダ達は人気のない路地裏にいる。
「それにしても本当にたくさん本があったね。」
エイダは本がたくさん並んでいるあの光景を思い返していた。
「そうじゃな、流石、本の街といったところ。エイダも後で暇があったら見ると良い、いい魔法書を紹介するぞ。」
アレン先生はエイダの肩に乗りながらそう言った。
「おいおい先生、浮かれるなっていってたじゃないかよ。」
ドンキホーテは口を尖らせた。
「お主は、目的そっちのけで本を見にいったんじゃろが、まずはメルジーナとやらに会う、それから本じゃ!今はマリデから探知系の魔法やアビリティに引っかからないお守りをもらってあるから良いが、もしかしたら襲撃があるかもしれないんじゃぞ?出来るだけ早く終わらせた方が良いじゃろう。」
アレン先生の正論にドンキホーテは反論できない、それでも苦し紛れに、「しょうがねぇだろ」と言って、こう続けた。
「メルジーナ先生の新刊が出てたんだからよ…」
ドンキホーテ本の入った袋を大事そうに抱えながら、言った。
「やれやれ」とアレン先生は言い。そのまま話を続ける。
「ところで、メルジーナとやらに会うにはどうしたらいいんじゃ?」
本に話題を取られてしまったが肝心なことは、メルジーナ先生に会うことである。その方法とやらまだエイダとアレン先生は聞かされていなかった。
「それなら当てがあるんだなぁ、この街には出版社が存在している。当然メルジーナ先生が贔屓にしている出版社もな。その出版社に行きメルジーナ先生の居場所を聞くんだ。」
それを聞き、アレン先生は疑問を覚えた。
「おいおい出版社が作家の場所なんぞ教えてくれるのかのぅ?」
ドンキホーテは自信満々に答える。
「なぁに答えてくれるさ、騎士の信用をなめるなよ?」
騎士の信用、果たして大丈夫だろうか、アレン先生の心中にそんな言葉が浮かぶが、ドンキホーテは案外、口のうまい男だと言うことを思い出し、信用をすることにした。
「じゃあ早速行こうぜメルジーナ先生の出版社に!」
ドンキホーテはそのまま人伝にメルジーナ先生の出版社を探し出し、ついに辿り着く。 レンス出版社それがその出版社の名前だった。
「ここだぜ!」
ドンキホーテはようやく探し当てたためか嬉しそうに出版社を指差す。
「ここがレンス出版社・・・」
エイダは建物を見渡し呟く。他の建物よりも少しばかり大きいこの出版社は、おそらく商業的に成功しているのだろう。
エイダたちは出版社の中に入り、受付へと進む。
「何か御用でしょうか?」
受付の担当の女性はドンキホーテ達を見ると話しかけてくる。すかさずドンキホーテは答えた。
「メルジーナ先生に会いたいんだが担当の方はいらっしゃるかな?」
それを聞くと女性はバツの悪そうな顔をして、信じられない一言を発した。
「メルジーナ先生は…3日前にお亡くなりなりになられました…」
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