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異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜  作者: 青山喜太


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ドンキホーテの助言

 当たらない、当たらない、当たらない、全てのエイダの魔法がドンキホーテではなく草むらに当たる。哀れな草むら達は燃やされたり、凍らされたりして、無残な姿へ変わっていった。

  エイダが今行なっているのは実戦訓練だ。実戦といってもエイダが一方的に魔法を放ち、それをドンキホーテに当てる。というだけの単純な訓練なのだが、これが難しい、ドンキホーテはなかなかに魔法に当たってくれない。もうこの訓練を続けて5日目にもなるのにだ。


「落ち着くのじゃエイダ。相手をよく見据えよ。」


  と、肩に乗っているアレン先生に言われるが、例え落ち着いていたとしても、無理なのではないだろうか。そんな思いがエイダの胸に湧き上がってきていた。


  「はい、半日経ったよ!」


  終了の合図が、マリデによって告げられる。ついにこの日もエイダはドンキホーテに魔法を当てることはできなかった。


「当てられなかった…私才能が無いのかな」


 落ち込むエイダにマリデは話しかける。


「いや、チャクラ使いに良くついていけてると僕は思うけどね。」


 聞きなれない単語にエイダは思わず、聞き返した。


「チャクラ?」


 アレン先生は付け足す。


「闘気のことじゃよ。チャクラとも呼ばれておるのじゃ。」


「ああすまない闘気の方が馴染みがあるか、ドンキホーテはかなりの実力者だよ。エイダ君、君が思っている以上にね。だからこそ練習になるのさ。」


  確かにマリデの言う通りだ、改めてドンキホーテの相手をしてみると、実力の差というものを改めて感じてしまう。


「闘気使いってやっぱりすごいんだね。」


 そうこぼしたエイダに、マリデは語り始める。


「もちろん、闘気は鍛え抜かれた肉体にしか生成できないエネルギーなんだ。闘気を使えること自体が強さの証明でもあるのさ。そして闘気に目覚めたものの肉体は闘気によってさらに進化するんだ。人間以上の肉体を手に入れることができるほかに、闘気の力を利用して自分の肉体をさらに強化したり、特殊能力に目覚めたりする場合もあるんだ。」


 ちなみにとアレン先生が割って入る。


「ドンキホーテは今のところ特殊能力どころか強化も使っておらんぞ。」


 エイダは驚く、ドンキホーテは、本気では無いどころか、実力の一端すら実は見せてはいないのでは無いだろうか、そんな風に思ってしまう。


(それでもあの速さなんだ。)


 ドンキホーテに魔法を当てるためにはやはり、工夫が必要なのだ。しかしそれが分かれば苦労はしない。エイダは悩む、どうすればいいのかと、この5日間魔法はかすりもしなかったのだ。このままでは一生当たらないのではないか?そんな不安がエイダによぎる。


「ようエイダ、何悩んでんだ?」


 そんな不安をかき消すように先ほどまで離れたところで一人でストレッチをしていた。ドンキホーテがエイダに近づき、話しかける。


「その…あなたに魔法を当てるにはどうしたらいいか考えてたの」


 エイダは悩みを打ち明ける。どうにも奇妙な気分だ

 これから、攻撃魔法を当てる相手にどうすれば魔法が当てられるかを相談するなど。

  しかし改めてドンキホーテの実力を実感したエイダは、ドンキホーテ自身に助言をもらうことによって、この状況の打開につながるのではないかと思っていた。ドンキホーテは腕を組み考えた後、エイダにいう。


「エイダの攻撃は直線的すぎるんだ、単純すぎるともいうな。避けられた後のことを考えていない。相手が避けた先の方向に魔法を撃ってみるといいと思うぞ。あと、エイダ、君の魔法なんだがよ。」


 何か思い当たることがあるのだろうか。エイダは不思議に思って聞き返した。


「私の魔法がどうかしたの?」


「日に日に速度が少しづつだけど上がってると思うぜ、俺に当たるのもあと少しかもな!」


 ドンキホーテはそう笑顔で言った。自分が当たる側だというのになぜそんなに陽気ななのか、つられてエイダも笑う。

  そして訓練が再開された。エイダはドンキホーテの言われたことを参考に敵の避ける方向を予測して魔法を放っていく。ドンキホーテの言う通りだ、前までは楽に避けられてしまっていた、魔法がドンキホーテに掠る様になっていく。エイダは確かな手応えを感じていた。


(これなら当てられる!)


  とエイダが思った時だ、そのエイダの気持ちの昂りに比例するように魔法の威力と速度が上がっていった。


「絶好調じゃなエイダ。」


 肩に乗りながら指導していたアレン先生はいう。今回の訓練のエイダは前と比べてかなりの成長をアレン先生は感じていた。


(やはり当てる役と当てられる役がいると訓練が捗るの。)


 アレン先生はそう感じた。これが今回の訓練の目的であった。当てる役と当てられる役を割り振り、当てられる役が当てる役の足りない部分を指摘していくそして当てる役の技術を向上させていくというものだ。ドンキホーテには指摘してもらう役割をしてもらったが、どうやら上手くいった様である。ドンキホーテの助言は今回ばかりは的確であったようで、エイダの自信を取り戻す結果にもなった。


(成功じゃな)


 アレン先生はそう思った。そしてこの日初めてエイダはドンキホーテに魔法を当てることに成功する。これで長かった実戦訓練も終わりだ。

 

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