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異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜  作者: 青山喜太


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反撃

  「上出来じゃ。エイダ」


 エイダはついに、10時間もの間は魔力の光球を維持することに成功した。アレン先生はその成果を褒め称える。


「エイダ、お前さんは本当に良い才能を持っておる。故に次の訓練も、まぁ耐えられるじゃろう。」


  エイダは覚悟を決める。恐らく、アレン先生の言い方から推察するに次も辛い特訓なのだろう。


「これからワシがエイダ、お前さんを攻撃する。お前さんは魔法で反撃をするのじゃ。」


「え?」


 何を言っているのだ、そう思った瞬間、エイダは吹き飛ばされ草原の上に転がされる。意味がわからない、なぜ突然吹き飛ばされているのか。なぜ自分は草の上に背をつけることになっているのか。


「ちょっとまって!」


 エイダは飛び起きアレン先生に懇願する。


「またん、反撃をするのじゃ」


  しかし返ってきた返事は無情だ。

  いくらなんでも、これは唐突すぎる。どうすれば魔法の反撃などできるのかエイダにはわからない、ということは、この理不尽な魔法による攻撃にさらされ続けるしかないのだ、そう思うと、エイダにとって恐怖でしかない。


(なんとか…なんとかしないと!)


 エイダはこの状況を打開する策を、全力で考える。

 魔法が使えない、ならば近接戦闘に持ち込むか?無理だ。相手はアレン先生、魔法のエキスパートだ、今のエイダの実力では難なく反撃に合うだろう。そして、そもそもこれは訓練、魔法で反撃と言われているのだから、格闘に頼るのは本末転倒である。

  ならば逃げるか?、意味がない、これは訓練なのだ逃げてしまっては今までの努力を否定する気がして、エイダはできなかった。

  だったらやはりこれしかない。


(魔法を…使う!)


  今までの訓練をエイダは思い出していた。あの光球を出す訓練はなんの意味があったのか、あれは魔力の純粋な塊だとアレン先生は言っていた。ならばあれをどうにかして攻撃に転用できれば、活路は見いだせる。そう思ったエイダは、魔力の塊を念じて出し構えた。


「うわぁ相変わらず、厳しいぜアレン先生は。」


 ドンキホーテは訓練の光景を見ながら呟く。その口調には、不安が混じっている。


「エイダ潰されねぇか?心配だよ俺は。」


 その様子を隣に座っているマリデは口を開く。


「しょうがないことだよ。ああするしかない。ドンキホーテ君はカルエ遺跡であった男をどう思った?」


 ドンキホーテは面を食らう。


「なんだよ急に、そりゃあ、あいつは強えと思ったぜ。」


「それだけかい?あの全てを静止する、能力にあの翼を見てどう思った。」


 マリデは質問を重ねる。なにかの答えを引き出したいたいかの様に。


「まるで、神の使者みたいだなと。ていうか多分神の使者だぜあいつ。」


「あの場にいた、誰もがそう思っただろうね。恐らく敵も転生者を揃えているんだ。だからこそ…」


「どんな能力を持つ敵が来るかわからない以上エイダには戦える様になってないとダメってことか?」


  「そうだね、最悪、君やアレン先生だけの力では守りきれない、可能性も出てくる。僕は今も分身を各地に分散させて仕事してるから、戦えないしね。そうなると最悪エイダ君だけでも戦える様に仕上げておかないと、例の神の使者の力だって、エイダ君はどうやら使いこなせているわけじゃなさそうだしね。」


  確かに、その通りだった。敵は未だに未知の部分が多すぎる。ドンキホーテとアレン先生は確かに強いしかし、それでも限界はある。だからこそ今のエイダに必要なのは、例え一人になっても自分のことを守れる力なのである。

  ドンキホーテは「そうだな」と、返事をする。マリデの意見は正しい、エイダがこの訓練で全てを諦めてしまう様ならば、恐らく次の調査にはついてこれないだろう。

 

「よそ見をするでないエイダ!」


 再びエイダの体が宙を舞う。草原の草の上に体は落ち、受け身も取れず、着地した時の衝撃がエイダ襲う。

  こうして吹き飛ばされるのは何回目だろうか。10回を超えたあたりから、数えるのが馬鹿らしくなり数えていない。


(全然できない…)


 エイダは行き詰まっていた。どうやっても魔法が発動する気がしない。果たしてアレン先生は一体何を教えようとしているのか。これでは、吹き飛ばされ受け身を取る練習をしている方が有意義な気がエイダにはしてきた。

  もう吹き飛ばされるのはいい加減、嫌気がさしてきた、そう思ったエイダは再びアレン先生を見据える。これを終わらせるには魔法で反撃をしなければならない。魔法を用いた反撃の仕方は未だにわかっていないしかし、アレン先生が、急にこんな無茶苦茶な訓練をし出したということはエイダ自身にはすでに、魔力を攻撃に転換することのできる。実力があるとアレン先生に認められているということではないか、エイダはそう考えた。


  (つまりアレン先生は私のその力を、引き出そうとしている。だったら!)


 その期待に応えなければならない。エイダは気合いを入れ直し、魔法の攻撃をするべく。再び行動を起こした。魔力の塊である光球を出し念じる。攻撃せよと。

  これはエイダがさっきからやっている、方法だ、一度も成功はしてはいないし、何か変化したかの様な感覚はなかったがこれ以外に、方法が思いつかないエイダはこれにすがるしかなかった。


「行くぞ、エイダ。」


 アレン先生は再び、エイダを吹き飛ばした、魔法を放つ。エイダは結局魔法での反撃ができないまま、アレン先生の魔法の発動を許してしまった。


(また、何も出ないまま…!)


  エイダは咄嗟に、腕を体の前に出し、防御の構えを無意識にとっていた。防げるわけがないと思っていたが、もうあの魔法で吹き飛ばされるのは嫌だったのだ。

  その思いが通じたのか、エイダはいつまでたっても吹き飛ばされない。エイダは目を開けると目の前に発光している、ガラスの様な半透明壁があった。

  それを目にしたアレン先生は驚き、笑い出す。


「合格じゃエイダ。」


 アレン先生はまだ笑ってる。


「ど、どうして笑ってるの先生!」


「いやはやまさか、攻撃ではなく防御を先に覚えるとはの。お前さんはとんでもない才能を持っておるな。」


「どういうこと?」


「わからんか?」


 アレン先生はニヤリと笑いながら続けた。


「防御魔法は攻撃魔法より数段難しいんじゃよ。」

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