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異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜  作者: 青山喜太


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エイダの才能

もう何時間だろうか、この手の上の光の玉と向き合うのは。いい加減精神的に辛くなってきた。エイダはそう思った。

この光の玉、まるで消えかけのロウソクの火ように、気を抜くとすぐに消えてしまう。消さないためには、集中を切らさずただひたすらに念じなければならない。その念じる力も1時間もすれば弱まっていき、2時間もすれば消えかけてしまう。そんなものを10時間続けて出せるようにしろというのだ。


(き、きついなぁ…)


エイダの頭の中でそんな声が響く。この酷な練習を告げた、当の本人のアレン先生は寝てしまっている。夢の中なのに。

エイダはアレン先生を恨む気持ちはなかったが、訓練中に寝ている、アレン先生を見て少し羨ましかった。自分も今すぐこの訓練をやめてあのように寝転がりたいという欲求に駆られる。しかし我慢だ。


(ここで投げ出すようなら一緒についていけない!)


エイダはそう思いなおし、目の前の光球に再び向き直る。確かに難しいことだが、無理なことではないと感じていた。最初は1時間も維持できなかったのだから。この調子でコツさえつかめれば10時間などあっという間だ。

エイダはそう思うことで、やる気をなんとか振り絞り念じることを続けていた。


「いやーすげーな」


ドンキホーテは、エイダの特訓を見て素直にそう口に出した。


「俺なんかあの光の玉出すのに1週間かかったんだぜ?なのに1発で成功して、しかもいきなり1時間も維持できたときたもんだ。天才だぜありゃぁ。」


ドンキホーテの脳裏には、アレン先生にしごかれた。魔法の特訓の日々が、再生されていた。


「そうだね、彼女の魔力の才能はかなり高い。本当に素人かどうか疑ってしまうほどにね。」


マリデもドンキホーテと同じく思うところがあるのか、語り始める。


「おそらくだけど、あの天才的な才能、神の使者としての能力が関係しているのかもね。神の使者の伝説ではなんらかの天才的な能力は、生れながら持っているもの、それが神の使者の条件だしね」


「なんだよボス詳しいじゃねぇか。ボスも異世界モノの小説、好きなのか?」


「ああ、好きというより調べたのさ、エイダ君の出自について手がかりになると思ってね。」


一方でそんな会話をよそにエイダは光球の維持に、集中していた。エイダの思った通りやればやるほど、少しづつだが、光球を出せる時間が長くなっていった。


(これならいつかは10時間以上いける!)


エイダがそう思った矢先。


「そろそろ休憩にしよう。」


と、マリデの声が聞こえる。


「精神的な負担が大きすぎても良くないからね。もうそろそろ練習を始めてから半日ほどたってる。無理は良くない。」


半日、そこまでたっていたとはエイダは気がつかなかった。必死でこの光の球と向き合っていたため。時間の感覚が狂ってしまっていたようだ。


「は、はい!」


エイダは光の玉を消す。思えばなんだか疲れたような気がする。肉体的な疲労はもちろんない、何せここは夢の中の美しい草原だ。しかし精神的な疲れは別である。考えてみれば声をかけられる寸前、集中があまりできなくなっていたことを思い出した。


「アレン先生!休憩だって!」


エイダは寝転がっているアレン先生を起こす。するとアレン先生は気だるげに返事をしながら起き上がった。


「おー、もうそんな時間かのぅ?」


夢の中で寝ぼけきったアレン先生を連れて、マリデとドンキホーテが待つ休憩の場へと足を運んだ。

休憩の場は草原の上にカーペットが敷かれておりその上にテーブルと椅子が置かれていた。さらにさのテーブルの上には、様々な菓子やお茶などが置かれている。連続で訓練を続けるエイダにとってはこれが楽しみの一つだ。

エイダ達は、椅子に座りお茶や菓子を頬張ると、マリデが話を切り出した。


「どうかな、クッキーを焼いてみたんだけど。」


頬張りながらドンキホーテは答える。


「うまいぜこれ!」


「汚いぞドンキホーテ!」


口からお菓子を飛ばされたアレン先生は怒る。しかしエイダもドンキホーテと同じ気持ちだった。夢の中のこのマリデが作る菓子はどれも美味しいものばかりであった。まさしく夢のような、理想の味だった。


「そうか、良かった。ところでエイダ君。アレン先生、授業は順調そうかな?」


アレン先生はカーペットの上で丸まりながら答える。


「まあちらりと、見た感じもう少しすればエイダも目標の時間まで維持できそうじゃし。そのあとじゃの、問題は。しかしまぁエイダの実力が思った以上に高いからの、大丈夫じゃろう。」


「そうか、それなら1ヶ月以内に終われそうだね。良かった良かった。流石にこの世界に1ヶ月以上いると、戻れなくなる可能性があるからね。」


さらりと恐ろしい話がエイダの耳に入る。この世界に閉じ込められる。考えただけでも恐ろしい。エイダは訓練に集中するため聞かなかったことにすることにした。

そうしてお茶会が終わるとエイダは訓練に戻る。アレン先生の予想通り、エイダは目標の10時間、光球の維持に成功した。エイダの魔法の訓練は次の段階へと移行する。


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