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異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜  作者: 青山喜太


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アレン先生の特訓

  ドンキホーテの意味のわからない説明の特訓にも、エイダは慣れてきた。なにせ始めた日から1週間、肉体の疲労を気にせずほとんどの時間を、あの擬音のみの説明を受けてきたため、だいぶ意味がわかるようになってきたのだ。


「おー結構様になってきたな!」


  エイダの体捌きを見てドンキホーテは言う。これも練習の成果だ、エイダはそう思うと少しだけ喜んだ。

  最初のうちは言葉の言っている意味も分からず、大変な思いをしていたが、言葉をわかってくるようになったら、ドンキホーテの教えというのは思いのほか、わかりやすく基礎的なものであるということがわかった。少なくとも剣の奪い方や突然襲われた時の対処法などを教わったがどれも基本的な動きに似通った部分があり、いかにも初心者のための格闘訓練という感じであった。しかもこの訓練ではある程度、実戦を意識した訓練だったため技だけでなく戦闘の際の立ち回りというものもエイダは学ぶことができた。

  最初は、なんだこの訓練は、と感じていたエイダも、訓練を続けていくうちにこの実戦形式の訓練の意図に気づき、これがいかに重要であるか理解していくと、一層、訓練に励むことができたのだった。

  と、そのように訓練に集中できる1週間を送ったエイダの実力は初心者にしてはという言葉がつくものの、素晴らしいものになっていった。ドンキホーテはこれ以上の実力の向上は今までの訓練だけでは難しいと見て、訓練終わりのエイダに言う。


「エイダ、今回で俺の訓練は終わりだ。」


  エイダは驚く、まだ1週間しか経っていないのに、もう終わらせてしまうのかと。その驚きをよそにドンキホーテはアレン先生を呼ぶ。


「アレン先生。頼むぜー!」


 草原の上でゴロゴロと猫らしく、寝転んでいたアレン先生はドンキホーテに呼ばれると、体を伸ばし、いかにもこれから訪れるであろう、地獄の特訓が嫌なのか気だるそうに欠伸をした。

  そう、この夢の世界の特訓は教えられる方もほぼノンストップでやっているが、それは教える方も同じことなのである。ドンキホーテは疲労も表に出さなかったが、普通に考えれば大変な労力のはずである。アレン先生のあのような反応も頷けると言うものだ。


「やれやれ始まってしまうのかの、ワシの特訓が。エイダ共に頑張ってくれるか?」


  アレン先生はどうやらエイダ以上にこの訓練についていけるか不安なようである。


「はい!」


 エイダはアレン先生の不安をかき消すつもりで、元気よく返事をした。さあ、魔法の訓練が幕を開ける。


「では、最初はのう。これじゃ。これをやるのじゃ。」


 エイダは身構える、キン、コン、カンの次は、あれ、これ、それ、だろうかと。


「安心せいドンキホーテのように指導に集中しすぎて語彙力が下がったりせんわい」


 それをアレン先生は瞬時に見抜く。


「まあ見ておくのじゃ。」


 アレン先生は前足を返し、ピンク色の肉球を空へと向ける。アレン先生は何かを念じるかのように目を瞑った。するとその肉球の上に紫色の光球が現れる。


「これはの、何にも変換していない魔力の塊じゃ。魔法使いはな、まずはこの魔力の塊を色々な魔法に変換することから始めるのじゃ。ではやってみるがいい。」


 やってみるがいい、と言われてもエイダにはそれの出し方というのはわからない。生まれてこのかた。そのような物の出し方は習ったことがないのだ。

 

「あの、どうすればいいの?」


「魔力を感じ、手のひらに出せ。強く念じればいけるはずじゃ。こればかりは説明ばかりするよりもやってみた方が早い。」


  かなりざっくりとした説明であったが、エイダはとにかく、やってみることにした。

  まず目を瞑り、手のひらを空に向ける。ここまではアレン先生の真似事だ。問題はここからである魔力を感じるというのはどういうことなのだろうか?

  エイダは心中で首をかしげる。しかし先生の、言い分通りならとにかくやらなければできないのだ。エイダは次に強く念じる。魔力の球よ、でろ。と

  すると手のひらが暖かく感じた。ぬるま湯の中に手を突っ込んでいふかような暖かさ、エイダは目を開けた。手のひらの上に白い光球があった。ぼんやりと光を放っているその光球をアレン先生は見ると口を開いた。


「やはりのぅ、お前さんならできると思ったぞ。」

 

  どうやらこの結果を見越していたようだ。

 その言葉を聞くと、安心したのか、エイダは気を緩めてしまう。気を緩めた瞬間、光球は消えてしまった。


「あ…」


  少々消えてしまったことに対して残念がるエイダに、アレン先生は話しかける。


  「消えてしまったのぅ、しかし、落胆することはない誰でも最初はあんなものじゃ、というか初めてにしてはできすぎておる。ワシの知る生徒の中で一番早いぞ、お主。」


  「そ、そう?」


 素直に褒められた。そのことが嬉しくつい、エイダは照れてしまう。しかしその嬉しさも次の瞬間、消え去ることとなる。


「ではの、先ほどの光球を10時間だし続けよ。」


 地獄の魔法の特訓が始まった。


感想などいただけましたら幸甚です。

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