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異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜  作者: 青山喜太


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第2の使者

  その男には光の翼が生えていた。赤く燃え上がるような光の線が複雑に絡み合ったかのようなその光の翼はどこか見覚えのあるものだった。


(神の使者の翼?!)


  ドンキホーテはあの男とエイダの姿が一瞬、重なって見え、最悪の想像をしてしまう。

  神の使者とは本当に一人だけなのかと。この今対峙しているこの男は神の使者の力を持つ男なのではないかとドンキホーテは理屈だけでなく直感でもそう感じていた。


「ドンキホーテ!」


 エイダが叫ぶ。しかしドンキホーテのダメージはそれほどでもない、男の雷を纏う貫手が直撃した程度ではドンキホーテにたいしたダメージは与えらなかったである。しかし、注意しなければならないのは攻撃の威力ではない。


(動きが見えなかった…!)


 ドンキホーテは思う、攻撃のスピード、それが一番の脅威であると。目で捉えきれないほどの攻撃を繰り出してくる、敵にあったことはある。しかし大抵そのような攻撃でも僅かな予備動作が存在するはずである。ドンキホーテは今まで、そのようなスピードを武器にして攻撃してくる敵に対しては予備動作や敵の思考を読んで攻撃を躱し、そして防御してきた。

  だがこの銀髪の男の攻撃には予備動作が存在しない構えやそもそも体が力む瞬間すらドンキホーテは捉えられなかったのである。


「逃げろ!みんな!」


  ドンキホーテは一瞬で悟るこのままでは勝てないと。ドンキホーテは体制を立て直し、自分の背後にいた銀髪の男に斬りかかる。一撃、二撃と剣を繰り出したが銀髪の男は雷の纏う腕で剣を逸らす。

  しかしドンキホーテの攻撃は止まらない三撃目は男の腕は切り落とさんばかりに、剣は振るわれ見事に男の腕を弾く。

  今、男の防御は崩れた、剣が窓から入り込む月の光を鈍く反射しながら、男の腕を切り裂こうと迫っていく。

  次の瞬間、剣は虚空を裂き、ドンキホーテは吹き飛ばれた。


(どういうことだ!また何も見えねぇ!)


 そのままドンキホーテは教会の壁にぶつかる。銀髪の男はどうやら剣の射程外であるドンキホーテの懐に移動していたようだ。

  羽を揺らし男は言う。


「無駄だ、四肢狩り。」

 

  ドンキホーテは足で踏ん張り、背中と地面をつけないように気張った。


(さっきの攻撃明らかに数発もらった、だがおかしい。一瞬の時間差もなく俺はその攻撃を同時に食らっていた。)


  ドンキホーテは一瞬、思案を巡らせる。数カ所にそれも同時に攻撃を行うなど可能なのだろうかと。

  しかしじっくり考えてる暇などない今は男の気を逸らさなければならない。ドンキホーテは再び男に向き直り立ち向かう。しかし


「無駄だと言っているのがわからないのか!」


 銀髪の男は再び、ドンキホーテに一瞬で何発もの攻撃を、当て吹き飛ばす。ドンキホーテは今度こそ地面に伏した。


「ようやくだな。エイダ。」


 銀髪の男はエイダ達の方に向き直り近づく、だがどこか違和感を感じる。まるで本物のようで本物ではないような。そこにいるのにいないような。


「ダミー…か。」


 エイダ達の姿が煙のようになって消える。ドンキホーテとの戦いの最中にどうやら何かの魔法を使い逃れたようだ。


「フヘッ、引っかかりやがったな!」


 銀髪の男の背後から先ほどまで突っ伏していた男の声が響き渡る。

  ドンキホーテ自分の足元に石を叩きつける。その石は砕けるとその身から眩い光を発した。

  その光に銀髪の男の目は眩み、思わず目を閉じて、そのまま、教会の梁の上に瞬間移動した。男が目を開けた時ドンキホーテの姿はなかった。まんまと逃げられたのだ。


「あの男…だがいくら逃げたところで無駄だ。」


 銀髪の男は不敵な笑みを浮かべる。

  一方エイダ達は教会の外まで逃げていた。アレン先生が、壁抜けの魔法をという物体をすり抜ける、魔法を咄嗟に使ったお陰で見事にドンキホーテ以外の全員を外に出す事に成功したのだ。今は教会の外にある遺跡の陰に隠れている。

 

「早くドンキホーテも連れて逃げないと!」


 エイダはそう言った、無理もないドンキホーテが一方的にやられるなどエイダは目の当たりにしたことがなかったのだ。しかしアレン先生はマリデと顔を見合わせるとこう言い返した。


「いやここで奴を倒すほかないのじゃ、エイダ。」


 エイダは焦る。


「そんな!あんなに、敵は強かったのに!もしかしたら神の使者かもしれないんだよ?!」


「だからこそじゃエイダ、強すぎるからこそ背を向けて逃げようものならワシらはやられる。あのスピードはどうしようもない」


「そうだね、僕もそれに賛成だ。」


 マリデもアレン先生に同意する。


「ここまで来といてなんだけど僕は戦えない。この体は魔法で作った分身だからね。だから僕も逃げられるほどのスペックは持ってないんだよ。ハハハッ」


「笑い事じゃないわい…全く…」


 そんな時だ。


「見つけたぞエイダ。」


 銀髪の男がいつのまにかエイダ達の近くにに立っていた。


「エイダ下がるのじゃ!」


 アレン先生は魔法の詠唱準備に入る。相手は神の使者、しかも謎の能力を持っている。勝算は低い。

 しかし、かと言って、あの瞬間移動のような速さでは転移魔法で逃げることは不可能だろう。だからこそ


「今は攻めじゃな!」


 アレン先生は遺跡を燃やさん勢いで広範囲の炎魔法を放つ。だが魔法は男には届かない、再び光る羽を出したかと思うと。一瞬で上空へと転移した。

  点での攻撃ではなく、面での制圧攻撃ならスピードは関係ないと踏んだアレン先生であったが、それでもこの男には攻撃は届かなかった。


「ダメか!」


  上空に移動した男はそのまま腕に雷を纏わせる。


(まずい!)


 またあの瞬間移動のような能力を使われる。エイダ達はそう感じた。アレン先生の次の攻撃魔法の詠唱は間に合わない。アレン先生は咄嗟に、防御魔法を唱える。

  唱えた瞬間アレン先生は強烈な攻撃を一瞬のうちに数撃、浴び吹き飛ばされた。


「ぐぅ!」


「アレン!」


 咄嗟にマリデはアレン先生を庇おうとするが、銀髪の男は、光の羽でマリデを吹っ飛ばした。


「邪魔をするな!まずはこの猫から殺す!」


  男の腕に稲妻が走る。その腕がアレン先生に向かい振り下ろされた。しかし、その腕が届くことはなかった。


「…!エイダ!」


 エイダは光の翼を携え、その翼でエイダ先生を庇っていた。


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