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異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜  作者: 青山喜太


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裏切り者

「今なんといった?」


  アレン先生は耳を疑う。ドンキホーテは、話を続ける。


「アレン先生テレパシーを頼む。」


  言われるがまま、アレン先生は魔法を詠唱した。テレパシー、思考伝達の魔法だ。


(改めて聞こう、不死とはどういうことじゃ?)


(そのままの意味さ、エイダは心臓を貫かれた、敵にな。普通は高位の回復魔法でも蘇生できないほどの致命傷をエイダは受けたんだ。そして……完全に一度死んでいた。)


 アレン先生は息を飲む。死者は基本蘇らない。ネクロマンサーでも無理なことのはずだ。


(恐らく、奴らはエイダのこの特性を知っていた。知っていた上で心臓を貫いたんだ。つまり、エイダのことをエイダ以上に知っている可能性がある。)


(襲撃の実行犯の中にエイダの出生について知っているものがおるということか?)


 ドンキホーテは目を伏せ、拳を強く握った。


(最悪…エイダの本当の親が関わっているのかもしれねぇ。)


(その可能性もあるか…)


  ただの、考えすぎなら良いのだ。しかし余りにも敵側がエイダのことを知りすぎている。エイダの出生に関わったものが、いると思うのが自然であった。


「先生エイダを見ていてくれるか俺は他の乗客を見てくる。」


「ああ、気をつけるんじゃぞ、ワシはまだダンスホールに奴らは正気に戻しておらん。もっとも衝撃で元に戻ってあるかもしれんがな。」


  ドンキホーテはわかった、と飛空挺の中に入っていった。

  さて、飛空挺の状況は思ったよりも最悪なものではなかった。金持ちたちの怪我人はドンキホーテが数えた限りどれも軽傷者しかおらず、犠牲となったのはボディガードの冒険者や傭兵だけだった。しかしそれはあくまでも観光用の飛空挺だけの話だ。軍事用飛空挺は一隻は奪われ、もう一隻は召喚された邪神の影響で何処かへ飛んで行ってしまった。

  いかにして辛うじて生き残ったものを連れて行くかとドンキホーテ達と船の見習いは思案を巡らせていると。頭上からプロペラの音が響き渡ってきた。飛空挺だ。ソール国の国旗もある。直々に国が救助をしにきてくれたのだ。

  その飛空挺は地面に着陸すると、中から騎士の出で立ちをした、しかし奇妙なものが現れた。その者、オークだったのである。オークとは人間と比べて大きな体躯、鋭い牙を持つ種族であり基本的に人間達とは対立関係にある種族だ。


「救助要請を受け駆けつけた第13騎士団の、レーデンスです。急ぎ怪我をしている方はこの中にお入りください。」


 第13騎士団、飛空挺を使い各所を転々とし緊急の魔物退治などを冒険者ギルドと連携し対処する。騎士団である。レーデンスという見知った名を聞いたドンキホーテは声がした方を向くと


「レーデンス!!」


 と、思わず手を挙げた。


「ドンキホーテ!?なぜお前がここに?!」


「話せば長くなる。とにかく怪我人を運ぼう。」


 レーデンスと呼ばれたオークの騎士は頷き、ドンキホーテ達と協力して怪我人を、飛空挺内に運んで行った。


  救助が終わり飛空挺は飛び立つ。ドンキホーテとアレン先生そしてまだ気を失っているエイダは、共に飛空挺の一室へと案内された。事情を聞くためにレーデンスも一緒だ。


「ドンキホーテまずは何があったかお前の口から聞きたい。」


「ああ、わかった今回の件俺のせいであの事故が起きた。」


 レーデンスは目を見開く。


「何?」


「ドンキホーテ、全てを話して良いのかの?」


「ああ、レーデンスなら信用できる。」


  ドンキホーテは全てを話したエイダのことも含めて。レーデンスはその一部始終を聞くと、腕を組み、唸り始めてしまった。


「うーむ、にわかには信じられないな不死などと、だがドンキホーテ、お前は隠し事はするが嘘はつかん男だ。信じてやる。」

 

  ドンキホーテは微笑む


「助かるぜ、レーデンス。この話をしたのは訳がある。お前さんの情報網の中で不死を研究しているような団体だったり、あるいは不審な団体が国内の中に出入りした記憶はあるか?」


  恐らく何か他の国が関わっているのなら、各地の場所を飛空挺で転々としている第13騎士団ならわかるかもしれないとドンキホーテは踏んでいた。

  だが返ってきた返事は、ドンキホーテの期待を裏切るものとなる。


「すまない、わからない、我々も完璧に見回りできているとは言い難い状況だ、特に今は隣国のロウル国が領土の所有権を主張し、ソール国とのロウル国の睨み合いが続いている。私たちはそちらの方で手一杯でな。今回はたまたま補給のために近くに通りかかっただけで、最近はソール国とロウル国の国境付近を巡回しているのだ。」


「そうか、ありがとうなレーデンス。」

 

 騎士団の情報網でもわからないというということは、相手がかなり、隠れるのが上手いか、もしくは


(そもそも外の国ではなく、ソール国の中からか?)


  恐ろしい予想だと思った。あれほどの驚異的な人材を揃えられる者がいるのだ。

 人攫いを手慣れた熟練の兵士を揃えられ、あの生と死を自在に操るネクロマンサーまで手中に収められるほどの者が。


「レーデンス国内では誰か気になるやつはいないか、噂でもいい。」


 レーデンスは再び腕を組み考える。しばらく黙りこくった後レーデンスは口を開く。


「そういえば、全く根拠ない噂だが。ある名門貴族に謀反の疑いがあるらしい。」


 レーデンスはためらいながら話す。レーデンスは真面目な男だこのような根も葉もない噂は好かないなのだろう。


「その貴族の名は?」


  ドンキホーテはその心情を察しながらも、聞く。


「グレン卿だ。」


 それは、今までソール国を支えてきた大貴族の名であった。

 


 

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