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異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜  作者: 青山喜太


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血に染まる服

  デッキの上で閃光が走る。2人の男は剣と鎌を、互いに繰り出し合い、激突させた。衝撃波が場を包む。

  デッキでの2人の戦いはいよいよ終わりが見えなくなってきた。ジャンが悪魔の腕を繰り出せば、ドンキホーテはそれに適切に対処し、盾や剣でのカウンター繰り出し、ドンキホーテが様々な道具や魔法での搦手を使えば、ジャンは自身のアビリティでそれらを難なく切り抜けていく。

  しかしそんな永遠に続くかに思われたその戦いは終わりを告げた。

  カミルが召喚した。邪神ルジェルーノの叫びだ。その叫びを、戦闘の途中であったドンキホーテはもろに食らってしまう。ドンキホーテは苦しみ、デッキの上に倒れてしまった。


「あーあ、呆気ねぇなあ。せっかく楽しかったのによ。」


 そう言ってジャンはドンキホーテに近づく。


「凶暴化じゃなくて昏睡を引くとはな。結構レアなんだぜ昏睡するやつ。」


  返事はない。ジャンはそのままドンキホーテの側にまで来て鎌を頭上に構えた。


「じゃあな、四肢狩り様。」


  鎌は力を込め、振り下ろされた。デッキの床に


「何!?」


  ドンキホーテは咄嗟に身を翻し、鎌を避けていた。そのままジャンに対し剣を振るった。剣はジャンの腹を開き少量の黒いゲルを吐き出させた。


「浅いか…」


 ドンキホーテはどうやら苦しむ演技をしていたようだ。


「テメェ、なぜ意識がある?まともに食らったんだぜ?へへッ面白れぇ。」


「精神操作なんざ気かねぇんだよ!」


 そう言うとドンキホーテは再びジャンに獣の様に襲い始める。ジャンは動揺からすぐに立ち直り剣を受け止めた。


「へへッ楽しいがここまでだな。」


 ジャンがそう言うと雲を切り裂き一隻の飛空挺が姿を現した。


「軍事用飛空挺?!なぜここに?」


 軍事用飛空挺はそのまま最初に爆撃を受けた観光用飛空挺の側面に着く。



(まさか、エイダは!)


 ジャンはドンキホーテが一瞬、気を取られているのを見抜き、鎌で吹き飛ばす。


「しまった!」


「じゃあな、四肢狩り様!」


  ジャンは軍事用飛空挺へと飛び乗る。間違いないエイダが、捕まってしまったのだ。ドンキホーテは急ぎ体制を立て直すとデッキの外の離れかけている軍事用飛空挺を見る。

  するとデッキ上にエイダと黒髪のリーダーと呼ばれた少女の姿、そしてジャンとカミルの姿が見えた。

  軍事用飛空挺はどんどん離れていく、しかしドンキホーテにはある考えがあった。それは連続のテレポートだ。普段はそこまで離れた距離をテレポートはできない。しかしテレポートを連続で使用することにより距離を稼ぐことは可能だ。そうすればあの離れゆく飛空挺にもたどり着けるだろう。かなりの魔力を消費するが。

  ドンキホーテは意を決しデッキから跳ぶ、そして充分に飛距離を稼いだあと、すぐさまにテレポートを使用。空間の地点から地点へ移動する。そして移動したあと間髪を入れず。すぐにテレポートを実行。これを繰り返し一気に飛空挺へと近づいていく。

  飛ぶ。飛ぶ。飛ぶ。それを繰り返すうちにドンキホーテの意識は消えかけていく。魔力不足による疲弊だ。それでも。


(守れない、あの頃の俺には戻らない!)


 ドンキホーテはさらに空間を飛んだ。



 軍事用飛空挺のデッキの上エイダは抵抗していた。


「離して!」


 なんとか死人を振りほどき少女と2人の男との距離をとる。


「ねえエイダちゃん。大人しくしてくれないかな?手荒な真似はしたくないの。同い年みたいだし。」


「私を…どうする気なの?!」


「それは教えられない、でも私の名前なら教えてあげる。私はアン。よろしくねエイダちゃん。」


  アンはそう言って自身の黒髪を掻き分けながら微笑んだ。

 

「エイダちゃん。あなたが黙ってこっちについてくれるなら、私たちは手荒な真似はしないわ。本当は私たちだって観光用飛空挺の乗客を、好きであんな目にしたわけじゃないの。」


「私が逃げたせいって言いたいの?」


「そうね。あなたは大人しく捕まるべきだったのよ。私たちに」


  エイダは唇を噛み締めた。

 

(私のせいで飛空挺の人たちが…でも、だからこそ。)


 エイダの気持ちは変わらなかった。変わるはずがないのだ。あのような惨劇を起こす輩どもにエイダは


「例え、やりたくなかったと言う心が本当だったとしても、あんな酷いことをやる人たちに私はついていけません。」


 そうきっぱりと言い切った。


「そう…なら仕方がないわね。」


 アンはため息を吐く。それはそれは残念そうに。


「痛いかもしれないけど我慢してね?」


 アンはそう忠告をしエイダの心臓を死人の兵士に貫かせた。


「あ、う……」


 エイダの服を血が染める、微かに動いていたエイダの肉体はやがて動かなくなった。

  その時だ。ジャンは上から異常な殺気が降り注いでくるのを感じ取る。奴だドンキホーテだ。

  ドンキホーテの目は血走り。常軌を逸していた。そのまま着地すると、彼は剣を目にも留まらぬ速さで抜きジャンとアンそしてカミルに向かって斬りつける。

  とっさの出来事、故に反応できたのはジャンとカミルのみだった。カミルはアンを庇い、ジャンは鎌で斬撃を受け止める。しかし斬撃は止まらず鎌ごとジャンを切り裂いた。


「ジャン!!!!!」

 

 アンが悲鳴をあげる。

  ドンキホーテはエイダの亡骸を抱きかかえると涙を見せながら飛空挺から飛び降りた。



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