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異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜  作者: 青山喜太


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飛空挺の街

  勇者が生まれた国ソールはユーライシア大陸において1番大きい国だ。

  なぜこのソール国が、大国になったのかそれは2000年前以上昔に遡る。古代、リナトリオンでは多くの国がシノギを削っていた。そんな中突然魔王が現れ多くの国々が焼き払われた。

  しかしソール国だけはまだ国として再起が可能な状態で生き残り、魔王と戦うため焼き払われた国々の技術者や戦士、魔法使いを集めた。その結果勇者が現れるまでの間、魔王の軍勢と戦い続けることが可能となった。次第に魔王の厄災から逃れたものはソール国へと集まっていき、いつのまにかソール国は魔王が暴力と恐怖で支配する時代において唯一、人間が支配する希望の国となったのである。魔王が倒された後もそれは変わらずソール国に留まった人間は多い、その結果ソール国は今や大陸1の大国となったのである。

  そんなソール国は魔王の時代から続く魔王に対抗するための技術が今も受け継がれている。その1つが飛空挺である。動力は魔法コアと呼ばれる魔法使い達がが60年ほどかけて作り出す、半永久的に動く代物を使っている。魔導コアを使い海上用の船に取り付けた浮遊魔法を施したプロペラを回すと、不思議なことに船は海を離れ空中へと飛翔する。今やこの飛空挺は軍事に利用するだけでなく。金持ちの道楽として観光用にも使われている。そんな飛空挺の事業が盛んな街がソール国、随一の飛空挺の街と呼ばれるエルメルの街である。

  そのエルメルにドンキホーテ達一向は到着したところだった。エルメルまでの道中は商人を護衛する冒険者の一団に紛れていたおかげか襲撃もなく安全にやってこられた。


「ここから先はさらに安全になるぞ。なにせセレブ御用達の観光用飛空艇に乗るからな!」


「観光用飛空艇……!」


 エイダは生まれてこのかた飛空挺など乗ったこともない。ドンキホーテの言う観光飛空挺にエイダは目を輝かせる。しかしアレン先生はどうやら乗り気ではないようだ。


「なあ、ドンキホーテ本当に飛空挺に乗るのか?空には魔物がいっぱいじゃし、高いし、わしはやっぱり違う方法がいいと思うんじゃが。」


「大丈夫だよ先生、言ったろセレブ御用達だって、確かに空には危険な魔物がたくさん潜んでるぜ?でも観光飛空挺はなセレブや、国のお偉い人がお忍びで来たりもするから複数の軍事飛空艇で護衛されるんだぜ?しかも内部もボディガードの冒険者や傭兵もいる。案外安全だぜ。」


  アレン先生はそう言われると渋々納得した。


「じゃあ船を見てくる!一緒に観に行くか?エイダ。」


「いいの!?」


 エイダは思わず自分が命を狙われていることを忘れドンキホーテについていく。今まで張り詰めていたせいかこのような華やかで活気のある街はエイダにとって新鮮で楽しかった。

  飛行艇のチケット売り場に着く。そこは屋内にあり窓から例の観光飛空挺が見えた。観光飛空挺は華美な装飾が施されている、デッキは広く恐らく空中の様子をみにくる観光客のために作られていることがわかる。推進力となるプロペラは船の側面に2つずつ、計4つ取りつられておりデッキから外を見渡そうとする際に邪魔にならないように意識設計されているようだ。


「すげーなおい!軍事用しか乗ったことねぇから楽しみだぜ。」


「ハァ、空なんぞ飛びとうないわ。」


 はしゃぐドンキホーテを他所にアレン先生は落ち込んでいる。エイダはただ感激してじっと観光用飛空挺を見つめていた。

  ドンキホーテがこの飛空挺という移動手段をとったのはある理由がある。

  まず飛空挺での移動は先ほどもドンキホーテが言った通り、軍事用の飛空艇がつき護衛をしてくれる。空の魔物というのはそれほど危険なのだ。逆に言えば空路での移動はそれほどリスキーでもあり生半可な手段では刺客もあっては来れないだろうという判断だった。

  そして何より移動の速さは飛空艇に勝るものはない。屍の大海という強力な刺客を倒してしまった今次に来るものは恐らくもっと強大な者のはずである。その強力な者に会う前にエイダを安全な「黒い羊達」の

 本部に急ぎ移動しなければならない、と感じたからでもあった。

  この旅路、楽な道などありはしないがドンキホーテそしてアレン先生はなるべくエイダに、負担がかかるような方法での移動は避けたかった。その負担が少ない方法という意味でも飛空艇は今回の旅路に最適な手段だった。

  案内係が大きな声で知らせる。


「もうすぐデウス号が発進いたします。お乗りの方は搭乗口まで、お並びください。」

 

「さあ行くぜ。」

 

「あ、はい!」


「ワシは大丈夫高いところでも大丈夫、大丈夫じゃ…」


 案内係に案内され、エイダ達は搭乗口まで進むすると


「チェック致しますそこでお止まりください。」


 どうやら安全のためにチェックを受けなければならないようだ。

 ドンキホーテは懐から手帳を取り出し


「私は遍歴の騎士です、これがその証である手帳なのですが、通ってもよろしいですか。」


 と嫌に丁寧にチェック担当を説得した。


「ああ、騎士の方でいらっしゃっいますか。すると後ろにいる方は……?」


「私の連れです。」


「かしこまりました。ああ、大変申し上げにくいのですが。ペットの猫は別の搭乗口となります。ええ、ドンキホーテ様ですと…ああラバを一頭お連れですね。申し訳ありませんがそこにそちらの猫ちゃんも入れるという形になってしまいますがよろしいでしょうか?」


 しまった、ドンキホーテはそう思ったがにこやかにこう返した。


「ええ、構いません。」


 その時のアレン先生の顔は、ドンキホーテにとって1週間ほど忘れられないものとなった。

  こうしてハプニングがありながらもドンキホーテたちは飛空艇に乗り込んだ。そしてデウス号は飛び立つ浮ついた上流階級達とエイダ達を乗せて。


 これからデウス号が沈むとも知らずに



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