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異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜  作者: 青山喜太


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屍との戦い①

 黒い水飛沫を上げ屍の大海が姿を表す。そのおぞましく冒涜的な姿は再びエイダに恐怖を与えた。


「エイダ!いいかよく聞けこれから先生と俺であいつを倒す。何処かに隠れているんだ!」


 ドンキホーテは叫んだ。エイダは頷くと隠れる場所がないか探した。エイダ達が出たところはどうやら森の中のようだ。近くには身を隠すにちょうどいい、茂みがたくさんある。エイダは茂みに身を隠した。


「先生、あいつは死体の目を視覚共有してるみたいだな。多分死体の目一つ一つの情報が本体のネクロマンサーに送られている。」


「そうじゃな。恐らく本体も近くにいるのじゃろう。」


  故に強力じゃ、アレン先生はそういうと魔法の詠唱を始める。


「屍の大海には弱点がある。あやつは魔物であるスライムを参考に作られておる。故に核となる屍がどこかにあるはずじゃ。じゃが・・・。」


「コアがどこにあるかわからない、そうだな先生?」


「ああじゃから時間をかけコアを見つけなければならん。コアを見つけるまで持ちこたえられるかドンキホーテ?」


「まかせな。」


 そういうとドンキホーテは左手に巻いてあった布に触れた。すると布はみるみると変化していき盾へと形を変えた。


「守ることは得意だ。」


 ドンキホーテは剣と盾を構えて屍の大海を見据えた。

 すると屍の大海はドンキホーテとアレン先生に気づいたのか。黒い水を触手のように伸ばしドンキホーテとアレン先生に襲いかかった。


「させるかよ!」


 そう叫ぶとドンキホーテは触手を剣で切り払い、触手とその触手の中にまるで骨格のように入っていた屍が切り落された。

 するとドンキホーテは気づく。この切った時の感触、水というよりもどちらかというよりゲルに近いのではないかと。あの黒い水の正体とは何かドンキホーテは気づき始めていた。恐らくあれは・・・人の肉が元になっているのだ。

  ドンキホーテは距離をとった。ならばこれが使えると。


「くらいな。化け物」


 ドンキホーテは不思議な模様が描かれた石を投げる。

 石は黒い水、もといゲルの中に吸い込まれ。取り込まれてしまった。すると吸い込まれた石は赤く発光し大きな炎を発生させる。 たちまち屍の大海は火に包まれた。


「ルーンの魔法が刻まれた石だぜ。」


 ドンキホーテはじっと屍の大海を見つめていた。次にどうなるかドンキホーテ自身わからないからだ。この屍の大海という怪物は知識としてはアレン先生に聞かされているが。どのようなものが効くか、アレン先生とドンキホーテにはわからない。なぜならこの怪物を作り出せる、ネクロマンサーというのは少ないからだ。


「先生、こいつもしかしたら!」


「気づいたか。お前さん切ったあとの破片をみて気づいたわ。こやつの液体のような部分やはり人の肉体でできおるようじゃな。つまりこの怪物を作るには特別な手順などいらぬ。恐らくは人の肉体さえあればいくらでも大きくなれる。白骨化した屍と、まだ肉の付いている屍が混じっているのは恐らく、取り込まれた順番が関係しているのだろう。取り込まれた時期が昔のものは肉が溶け白骨化しており、最近のものは溶けかけた肉が残っておる。」


「こいつはやばいぜ。ここでこの怪物は倒しておかないと。回復のために人々を襲う!」


「その通りじゃここで倒すぞ。」


 黒いゲルが炎の隙間から飛び出して炎を覆った。みるみる黒いゲルが炎を消していく。


「先生、炎の魔法なら!」


「わかっておる!」


 アレン先生は、詠唱を終わらせる。すると180センチはあるドンキホーテの体の3倍ほどの大きさの火球が現れ、凄まじい速度で屍の大海に向かい発射された。

 すると屍の大海はとっさに形を変え、逆にその火球を飲み込む。


「馬鹿め、酸素をかき消したからといって消えるわけではないわ。その炎は魔法で燃えておる。ルーンのようにはいかんぞ!」


 アレン先生の言う通り屍の大海は火球を相殺しきれず深紅の炎に包み込まれる。これではもう崩壊は免れない。

  二人はそう思っていた。

  突如炎の中から火に包まれていない黒いゲルをまとった白骨化した死体が吐き出される。その死体は吐き出された勢いを利用してアレン先生に接近し、持っている剣で切りかかった。


「先生!」


 ドンキホーテはとっさに左腕に装着された盾でその剣を防ぎ逆に切りつける。しかし浅い、とっさに身を躱されたせいで、胴の部分を切りつけたが骨を切断するまでには行かず傷をつけるだけに終わってしまった。

  距離をとったその骸骨はまだ無事だった黒いゲルを呼び寄せ体に纏わせた。それはまるで黒いゲルが骨格を覆う人の肉体のようにドンキホーテは見えた。

  ドンキホーテはこのように死者を冒涜するような魔法を使うものを賞賛したくはなかったが。それでもその完成度の高さに驚かずにはいられなかった。

  変幻自在で土を掘ることも可能な屍の大海の形態から。その形態が不利と見るやとっさにこのような魔術師を狩るための近接戦特化の形態に姿を変える。恐らくこのようなことが出来るネクロマンサーは世界で2人といないだろう。


「先生あいつは俺に任せてくれ。先生は魔法で援護を!」


「わかっておる。気張れよドンキホーテあのスケルトンかなり手強いぞ。」


 燃え盛る屍の大海とともに新たな戦いの火蓋が切られようとしていた。

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